講師:竹内 雄一郎氏
(株式会社ソニーコンピュータサイエンス研究所 アソシエイトリサーチャー
国立研究開発法人 科学技術振興機構 さきがけ研究者)
Facebookのプロフィールのように、自由にカスタマイズできる未来の建物。Wikipediaのように、絶えず皆で編集・改良できる未来の都市。デジタルメディアの持つ可変性やインタラクティブ性を住環境に付与することで、私は上記のような世界を実現しようとしています。これはHCI(ヒューマン・コンピュータ・インタラクション)の新たな時代を切り拓く試みであると同時に、所謂「スマートシティ」に代わる新たな未来都市像を確立する試みでもあります。本講演では研究の背景や具体的な取り組み、そして今後の展望について紹介します。
日時:2016年2月9日(火)14:00~15:30
場所:京都大学 デザインファブリケーション拠点(研究実験棟151室)
デザインファブリケーション拠点のアクセス
主催: 京都大学デザイン学大学院連携プログラム
問合わせ先:nakakoji[at]design.kyoto-u.ac.jp([at]を@に変えてください)
中小路 久美代(京都大学 デザイン学ユニット)
講演者略歴:
株式会社ソニーコンピュータサイエンス研究所アソシエイトリサーチャー、国立研究開発法人科学技術振興機構さきがけ研究者(兼任)。専門は都市の未来を創造する計算機科学。カナダ・トロント生まれ。東京大学大学院新領域創成科学研究科博士課程修了、ハーバード大学デザイン大学院修士課程修了。受賞歴にACM CHI Best Paper Award等。博士(科学)。
講演報告:
参加者:19名(内デザイン学履修者6名)
デジタルメディアの持つ可変性やインタラクティビティ性を住環境に付与することで、Facebookのプロフィールのように自由にカスタマイズできる未来の建物や、Wikipediaのように絶えず皆で編集・改良できる未来の都市について、「ハビタブル・ビット」と呼ぶ情報と建築を融合するアプローチについてご講演を頂いた。講演者の竹内氏は、情報科学の博士号と建築学の修士号を取られていて、本デザイン学で扱う融合分野を研究対象とされている研究者である。
「スマートシティ」に代わる新たな未来都市像として、Responsive Architecture、Augmented Architecture、Printable Architectureという三つの要素をとりあげ、それらを、ビデオやスライドを用いた具体的な技術やツールの紹介により解説いただいた。3Dプリンタを用いたprintableな(印刷できる)庭や、インタラクティブに光源を制御するための光源技術の開発など、機械工学における技術の要素も盛り込まれており、参加者らの興味を大いに引くものであった。
講演時には、既存分野の枠組みを超えたこのような分野での研究を進められる上での苦労や葛藤といったことにも言及いただき、デザイン学教育における課題やカリキュラム設計に対して多くの示唆を得るものとなった。また、ご講演で説明された、物理的なモノを作り出してそれを社会に出していくことで駆動されるような研究手法は、当日の会場となったデザインファブリケーション拠点の意義や位置づけを確認する意味においても非常に有益なものであった。