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デザインフォーラム ビジネスデザインシリーズ vol.15

「100年企業、変革への挑戦」
~「モノ」から「コト」へ 「コト」から「ユメ」へ ~



今回は、コンシューマ向けのプロダクツビジネス(B to C)でなく、センシング/計測/制御分野の先進テクノロジーを駆使し、多くのデータを分析・活用しながら、様々な業種の工場管理/運営やソリューション提供を行うことを主たるビジネス(B to B)として、成功裏に展開されております横河電機(株)様にご登壇頂きます。
創業100年を超え、更に顧客の夢を叶えるサービス事業にチャレンジされる該社の理念や将来展望、戦略、事業、人材などの視点から、トップの生の声を直接届けて頂きます。

日時:2018年6月4日(月)17:30~(19:00頃から懇話会・有料)
場所:京都大学 デザインイノベーション拠点(KRP9号館)

講演者:西島 剛志氏(横河電機株式会社・代表取締役社長)

講演概要:
AI/IOT/Big Dataなどのデジタルテクノロジーは凄まじいスピードで日々進化し続けており、産業構造とビジネスのあり方を根本的に変えるほどの影響力を持っている。我々は、この破壊的な技術革新の波に飲み込まれてしまうのではなく、これを活用して自らの手でイノベーションを起こさなければならない。
当社は、1915年の創業以来、社会や経済が変化する中で自らを変革し続け、計測から制御、情報へと領域を拡げながら時代に必要な技術を届けることで産業の発展に貢献してきた。そして今、パラダイムシフトとも言える大変革期の真っただ中で、従来からの計測・制御機器の製造・販売というモノづくり志向から、お客様のビジネス課題の解決を通じてお客様の夢を叶えるサービス事業への変革に挑んでいる。
今回の講演では、歴史を重ねた企業だからこそ直面する変革の困難さや苦労話も交えながら、現在進行中の手探りの取り組みの一端を紹介し、VUCA(*)と言われる近未来ですら予測不可能な世界で、我々企業がいかに勝ち残りへの道を探るべきかを、皆様と一緒に考えてみたい。

(*)VUCA(ブーカ):Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字を取った言葉。現代の企業や個人のおかれた環境を表現するキーワードとして使われている。

対象:京都大学教員・学生、デザインイノベーションコンソーシアム会員、一部招待者

定員:40名程度

参加費:無料(懇話会 1,000円)

申込: 5月28日(月)締切。下記よりお申込みください。
   https://pro.form-mailer.jp/fms/d33a0e3b141721

主催: 京都大学デザイン学大学院連携プログラム
    デザインイノベーションコンソーシアム

問い合わせ:デザインイノベーションコンソーシアム 事務局
      京都リサーチパーク(株)松浦
      info[at]designinnovation.jp([at]を@に変えてください)
      075-315-8522


報告:
冒頭、当該フォーラム、並びに今回のテーマ設定に関し、貫井先生の主旨説明がなされた。そして、西島社長の講演へと移り、更に参加者を交えての活発な討議、意見交換が行われた。(参加者;83名)

[講演内容主意]
(1)会社概要のご紹介
今日は技術の話ではなく、今我々が取り組んでいる企業の変革についてのお話をしようと思い、このようなテーマにさせていただきました。
横河電機の創立は1915年、2015年が100周年でした。創業者の横河民輔は建築家で、アナログのメーター、電力計を国産化するということで始まった会社です。創業の精神は「品質第一主義」「パイオニア精神」「社会への貢献」の3つで、非常に大事に継承されています。2017年度の売上は約4000億円、従業員は1万9000人弱です。
 企業理念は「YOKOGAWAは計測と制御と情報をテーマに より豊かな人間社会の実現に貢献する YOKOGAWA人は良き市民であり勇気をもった開拓者であれ」。事業は「計測事業」「制御事業」「航機その他事業」の3つ。制御事業が売上の9割くらいを占め、計測と航機その他事業は各5%くらいで、ほとんどが制御事業に集中しています。海外比率が非常に高くて売上の7割、従業員も63%が日本以外で、海外拠点はほとんど現地化されている状況です。アナログメーターからスタートし、測定器、工業計器、センサーにより流量・圧力・温度を測って自動的にプラントプロセスをコントロールする制御事業、最終的にはそれらのサービスを通してずっとお付き合いさせて頂くというビジネス展開をしてまいりました。かつては「日本初」「世界初」というものをたくさん作りましたが、最近は新しいということだけでは、成果を出し難くなってきています。
 制御事業は、ガスや石油の精製、化学プラントの反応塔や製鉄所の高炉など、モノ自身が反応・分解し性状を変えていく連続系のプロセスオートメーション(PA)、医薬品・食品、半導体、エレクトロニクス、自動車などの、どちらかというとモノを組み立てるファクトリーオートメーション(FA)があります。これらは、同じ「制御」でも仕組みが違います。その中間の、連続性と組み立ての両方が混在している状況をハイブリッドと呼んでいます。我々は連続プロセスからハイブリッドプロセスが得意部分で、比較的規模が大きなプラントの制御をしています。PA制御システムはプラントの脳や神経にあたるような役割で、それを自動で行っています。PAは非常に巨大な設備で、設備の規模や生産量に対して人の関わりが少ないのが特徴です。たとえば、サウジアラビアにあるペトロ・ラービグという石油化学コンプレックスは、1期工事で約1兆円、さらに2期の拡張工事でも数千億の資金が投じられた巨大プラントです。中央制御室にあるシステムにより、プラントに設置された数十万点にも及ぶセンサーやバルブを自動制御することで、プラント全体を設定した条件になるよう安定的にコントロールしています。このようなプラントでは、トラブルが生じますと周囲への影響もたいへん大きく、また人命にも関わるので絶対に事故を起こせません。
PAの世界では断トツでシェアをもっている企業はなく、Siemens(ドイツ)、Emerson(アメリカ)、ABB(スイス)、Honeywell(アメリカ)、Schneider(フランス)、YOKOGAWAで、10数%ずつです。それぞれ得意領域が違っていて、Siemens やABBは発電所、電力のプラントが比較的得意です。一方、EmersonやHoneywellは石油化学などを得意とし、住み分けの状態にあります。また、プラントの運転中に異常事態が起きたときや一定の閾値を超えたときに制御システムと別の系列で自動的にプラントを安全に止めるという安全システムがあり、これらがだいたいセットになって入っています。当社のDCS(分散型生産制御システム)のシェアは、5番目くらいですが、石油化学分野でのシェアは1位です。競合会社のABBやHoneywell、Siemensは巨大企業で、数兆円の売上を持っています。我々は約4000億円で全体規模は小さいですが、制御メーカーとして制御という領域に特化し、なおかつ石油化学・化学、石油・ガス(LNG)分野を得意としています。ハイドロカーボンの領域の仕事が海外では増えてきており、特にLNGプラントの仕事が多くなっています。現在国内では石油や石油化学は産業全体でもマジョリティーを占める状況にはありませんので、食品、医薬品、あるいは紙パルプ、鉄などいろいろな産業にシステムをバランスよく納入してビジネス展開しています。
横河電機では、1957年頃からグローバル化をスタートして、現在は80カ国112社ほどに広がっています。このようなグローバル化は、‛プラントは非常にミッションクリティカルなので、いつでもサービスマンが駆けつけられる状態を作らないといけない’ということに起因しています。そのため現地の社員がお客様と一緒に仕事をする形になっています。海外の売上高は1990年度は約500億円だったのが、2014年度には約2800億円となりました。東南アジアや中東、ロシアで高いシェアを持っています。日本企業はお客様の要望を聞いてこまめなサービスをするというのが得意分野ですから、徐々にライバル企業から我々のシステムに切り替えてくださって、シェアが4割以上に至っています。
 ペトロ・ラービグのように数十万点以上ものきわめて多くのセンサーやバルブなどを設置しているプラントをプロジェクトとして実行するためには、エンジニアリングという‛プロジェクトを全体管理していく仕事’が入ります。その部分が非常に大きくなっていて、製品の比率は50%以下です。実は制御システムというのはあまり製品の差別化ができません。ビジネスには、きめ細かな対応やしっかりとしたプロジェクトエグゼキューション、コスト競争力、またこれまでの経験やお客様との信頼関係の部分が重要であるのは、どこの業界も同じだと思います。

(2)“A VUCA World”とデジタル技術革命のインパクト
さて、VUCAというのは、変わりやすく(Volatility)不確実で(Uncertainty)非常に複雑で(Complexity)曖昧な(Ambiguity)という意味で、2015年頃からよく使われるようになったと思います。海外に行くたびに、VUCAという言葉がぴったりの世の中になっているなと感じます。
なぜこうなったのか。私が生まれた1957年頃の人口は30億人あまりでしたが、今は70億人くらいまで増えていますし、デジタル技術やグローバル化の加速、それから気候変動、資源の枯渇、最近は地政学的なリスクなども挙げられます。デジタル技術が発達し、ネットワークでみんながつながっているということが最大のVUCAになった理由だと思います。ひとつのことがあっという間に世界中に波及して予想できないことが起こる時代になったと思います。とくにデジタル技術革新は本当にすごいスピードで起こっています。
ところで世界最大のタクシー会社はUberですが、車を持っていません。世界でもっとも普及したメディアはFacebookですが、こちらはノーコンテンツ。世界最大の時価総額の小売アリババも在庫を持っていません。世界最大の宿泊サービス会社Airbnbはユーザーと貸す側をつなぐ役割なので、どちらかというと手数料で仕事をされています。どのくらいの宿泊バリューを作ったかを考えると、年率1500%。2010年からサービスが始まって2兆円に至るようなエクスポネンシャルな成長を達成しています。この背景には当然CPU、メモリーの大容量化やネットワークの進展があります。このスピードが半端ではないのです。
センサーの出荷予測では、2022年頃には10兆個のセンサーが世界のネットワークにつながると予測されています。デジタルデータ量は、2020年には約40ゼタバイト(1ゼタバイトは10バイトの21乗)、それだけのデータが2020年には溜まるという時代になっていきます。たとえばカメラで考えると、2000年頃からコンパクトデジタルカメラが出てきましたが、やがてスマホに駆逐されました。もうエクスポネンシャルを超えています。このようにデジタル技術は普及しだすと一気に広がってしまいます。だから世界中でみんな必死になって活用を考えているわけです。一昨年より去年、去年より今年、自分がエクスポネンシャルの上に乗っているということを肌で感じる日々になりました。
Digitalized(デジタル化)、Deceptive(潜航)、Disruptive(破壊)、Demonetarized(非収益化)、Dematerialized(非物質化)、Democratized(大衆化)という「エクスポネンシャルの6Ds」というのは、シンギュラリティ大学のピーター・ディアマンティスが提唱したものですが、最初は情報がなんでもデジタル化されて潜航する。エクスポネンシャルというのは、最初は誰も変化を感じなくて突然首をもたげ、あるポイントを超えたら一気にほぼバーティカルに立ち上がっていきます。それで破壊的なスピードに変わり、次にやってくるのが非収益の怖さ。エクスポネンシャルの上では金銭という因子が消えて何でもタダになる。カメラで考えるとフィルムがなくなって現像がなくなって最後スマホになった。カメラの商売が一切なくなって非収益化というのが起こる。次の非物質化とはアプリケーションですね。非物質化が起こったのち、最後は大衆化してお金持ちしか使えなかったものが誰にでも使えるようになります。
我々はエクスポネンシャルの成長=破壊的進化の変化を見落とさないようにしないといけません。そして非収益化、非物質化を想定する必要があります。非収益化、非物質化したものの上で自分の居場所を探すことが求められています。大衆化も避けられません。人間は「直線に動いている」と思っていますが、直線的に動く変化というのはあまりなくて、だいたいエクスポネンシャルになっていると理解したほうがいいでしょう。それが今のデジタル技術、膨大なデータ、センサー、ネットワーク、容量、CPUのスループットによって感じられる世界になっています。

(3)VUCAワールドでの勝ち残りに向けた変革への挑戦
これまでのように、信頼性のある制御システムをお客様のプラントに入れてしっかりとサービスをすればずっと安泰だという時代ではなくなっています。そう考えて我々は3年前からソリューションカンパニーを目指して変革に挑んでいます。とりわけ、我々の事業環境変化がVUCA、イノベーション加速、それからエネルギーが急速にシフトしていることなどに関係していることもあります。ヨーロッパなどは再生エネルギーにものすごい勢いで移行していますし、サウジアラビアという世界最大の産油国でも、世界最大の石油会社が巨大なソーラー発電を始める時代です。我々が今まで依拠してきたところなので、変化が非常に大きいです。
そんな中、世界中の企業がSDGs(Sustainable Development Goals)に貢献するということで走り出したのを機に、我々は最終製品を作るのではなくてお客様のものづくりやインフラ運営を支える立場として、お客様のSDGsの貢献にサポートできるということをポジティブに使っていこうと考え、2015年に長期経営構想として経営ビジョンの設定を行いました。まず、ビジョンステートメント「YOKOGAWAは“Process Co-Innovation”を通じて、お客様と共に明日をひらく新しい価値を創造します」を掲げ、2017年にSDGsにからんでサスティナビリティ目標「Three goals」(Net-zero Emission、Well-being、Circular Economy)を策定しました。ビジョンステートメントは社員だけでなくお客様にも説明をして理解をしていただいています。全体としてサスティナビリティ目標のゴールを2050年に設定して社外にもアナウンスをして進めています。ビジョンステートメントは、価値創造をお客様やパートナーの方と一緒にしますということです。多様なバックグラウンドを持った方々がお互いにアイデアをぶつけ合いコミュニケーションしないとイノベーションが生まれないのと同じように、我々の仕事もお客様やパートナーと得意分野をお互いにシェアをして生産性の向上に取り組まないとイノベーティブな活動はできないということで、こういうビジョンステートメントを設定しました。
また、2015年に、Co-innovating tomorrowというコーポレート・ブランド・スローガンを設定しています。お客様とお話をするときに、「我々がこういうことをすると、お客様のプラントの例えばエネルギーコストがこれだけ下がります、CO2排出量がこれだけ下がります」と定量的に示すことから仕事を始めるようにしよう、という意味でビジョンステートメントの解釈に入れました。我々の事業活動はお客様の課題を発掘してそれを解決すること、まずはお客様に経済価値を生み出し、その先がSDGsに結びつくという、価値創造ストーリーという形で表しました。我々がサスティナビリティ目標の活動をすることで最終的には社会、一般消費者の方々に貢献することができるだろう、というコンセプトで2018年に考え方を決めました。本題の「モノ」から「コト」へ、「コト」から「ユメ」へ、というのは2015年に作った考え方です。もともと我々は汎用的なものをいかに品質よく信頼性高く安く作るかということをやってきて、次にサービス分野でお客様にコトをつくる、経済価値を生み出すということに挑戦している段階です。「ユメ」というのは先ほどのco-innovationです。お客様と我々、あるいはパートナーの企業の方も、誰も実現したことのないイノベーションを生み出し、これが他の方に展開されていくことを歓迎する活動にしようというビジョンを持っています。
サスティナビリティKPIは、2030年に「CO2の10億トン削減に貢献します」、「安全・健康価値の創出に1兆円」、「資源効率の改善で1兆円」。これを社会に発表して、価値創造ストーリーとして説明してコミットすることをしています。このビジョンを実行するのはなかなか大変です。石油事業のお客様は30年40年とプラントを運営されますので、こちらもあまり冒険しなくてもなんとなく事業がうまくいきます。そのため社内は同質化して、挑戦を避け、安全な方向にいくという企業文化がありますから、これを打ち破らないといけませんでした。同じものからは新しいものは生まれません。異なるものが交わって初めて新しいものが生まれるという多様性の考え方が必要でした。多様性はどちらかというと先天的なものより後天的なものが重要だと考えます。お互いにアイデアをぶつけあったときの刺激が次のアイデアを生み出すということを経験していると、バックグラウンドの違いというのは非常に大きいわけです。
それでここ何年間か、社外から全然違う業界の方に来てもらっています。海外拠点ではなるべく外国人に仕事をしてもらっていて、90%くらいは現地採用です。このくらい交わるだけで、まったく違う文化、考え方、リアクション、意見がきますので刺激があって変化が出ます。また、プラントの運営、経営を最適化するための業種特化型の、KBCというイギリスのコンサルタント会社を買収しました。
もうひとつはリーダーシップの変革にも取り組んでいます。歴史のある会社なのでどちらかというとダイレクティブなヒエラルキーがありました。しかしVUCAで求められるリーダーは、スタックして困ったり、立ち往生している部下や同僚を前に進める役割を担う人なのです。社員一人ひとりがこういうリーダーシップを意識して行動できるようにならないといけません。従来型のリーダーシップではなく、もっとサーバントなリーダーシップが必要です。信頼関係で仕事をするような形にしていかないと、おそらく情報も上がってこないしコミュニケーションも取れません。だからリーダーシップというのは変化を具現化してまわりの人に変化を実現させるように自発的にうながす能力が必要です。リーダーシップを変えるための一環として、一昨年社長室をはじめ役員室を取り払いました。コミュニケーションや風通しをよくして、意見をぶつけ合うには肌で感じる変化が必要です。口だけでなく見える形にしようということでもあります。VUCAの時代は、先を見通せないし、複雑、曖昧で、変化が激しい。現場で意思を持って何かを決めて行動できる人をたくさん作らないといけません。そのためには自立型組織に変革しようということでいろいろやっています。多様性というのは非常に重要で、今までの組織を変えるにはいろいろなバックグラウンド、知見、モチベーション、パッションを持った人が交わるということがいちばんのキーだろうと強く思っています。それは受け入れ側にも非常にいい影響を及ぼしています。
こういう環境を作ってイノベーションを一生懸命やっていますが、それでもやはり既存側の事業の吸引力があって、簡単にすんなりといくものではありません。そこで新事業を始めるには、活動をある程度分離しないとだめだということで二階建てのシステムを作るようにしています。下側はしっかりと会社を支える事業として、上側はイノベーション活動を別の次元で回して、新しい事業をクリエーションしていく活動を外部のエキスパートを中心にはじめています。それから、デザインシンキングを我々も取り入れてやっています。以前は海外からのアイデアを吸い上げる仕組みがなかったので、海外の社員たちがいろんなアイデアを投稿して議論をする「HiT」(Hunt for Innovation Treasure)という仕組みを作りました。他にも、イノベーションのためにアイディエーションから研究開発、インキュベーションのステージのサイクルを仕組み化したり、外部とのオープンイノベーションの専門組織を作ったり、他社とのアライアンス促進を行い、会社のなかを変えています。
これでどんな変化が起こったのか。まず国内の制御事業が随分と変わりました。国内市場が成熟化していて課題解決する以外に仕事がないのですが、どんどん自分たちでコンサルタントの勉強を始めて、たとえば省エネルギーや安全などの提案をしてプロジェクトを回すという取り組みが始まってきています。お客様の価値を起点に考え、自分たちの持っている能力をその方向で使う、そういう変化が起こってきています。
海外では先ほど言ったKBCを買収し海外のメンバーどうしでのコミュニケーションが活性化してきています。それから海外から来たIT系の人材が引っ張って、5月にIIoTのプラットフォームとなる新会社を作りました。また、細胞分析の共同研究開発コンソーシアムを武田薬品の湘南ヘルスイノベーションパーク内に立ち上げました。ものづくりが生物由来になってきているので、バイオ抗体薬の生産ソリューションや、微生物コンタミ管理ソリューションなどを開発しています。これらが回るようになって、研究イノベーションをやっている人たちには更に活気が出てきています。

(4)まとめ:VUCA時代における変革への挑戦とは
ロシアや中東へ行くと日本の工場の中央制御室とはまったく違う景色が見えます。サウジアラビアでは国中のすべてのアセットのすべてのセンサーのデータが、幅60mのディスプレイに映されています。センサーデータが収集・モニター・分析されてアクションをかける時代になっています。こういう時代に、我々自身はイノベーションをお客様やパートナーと、365日24時間作り続けていないと企業活動は継続できないのではないかと考えています。イノベーションには小さなものから大きなものまでたくさんありますが、自分たちの得意なところを磨いて、お客様のノウハウや知見と交わらせて、イノベーションを回し続ける時代になっているということです。そういうことを考えて、課題解決型企業への変革を目指し、今後どんどん省エネなどの分野で貢献していこうと思っています。新しい事業をもう一度組み立てて、先ほどのイノベーションの取り組み、仕組みをたくさん入れ、そして外部から人も来てもらって新事業の開発に力を注いでいます。
製品からものを考えるか、あるいはお客様の価値から考えるかというのは、結局目的を探す能力だと思います。要するに「これを解決したら、あるいはこれを実現したら、これだけの価値が生まれる」というのを探す能力を磨き続けることです。でもそれは我々だけでは絶対にできません。なぜかというとお客様の企業活動とつながっているからで、お客様とコラボレーション、co-innovationしないかぎり、目的には行き着きません。ですから、会社のなかにそのDNAを作ってオープンにして、お客様でもパートナーでもコラボレーションしてイノベーションを生み出す組織になっていくということが大事です。そのために多様性やリーダーシップの改革をしたり、ビジョンを掲げてなるべく社員に繰り返し繰り返し話をしたり、ということをしています。
事業環境も決して楽観できる状況ではありませんが、ビジネスをしっかり支えながら変身変革をぜひ成し遂げていきたいと思います。今日企業から来られている方もぜひ、co-innovationをする機会があれば一緒にさせていただきたいと思います。
以上

bizdesign-vol15フライヤー