日時:2017年11月20日(月)10:00~12:30
場所:京都大学 吉田本部構内 総合研究2号館 3階東側 マルチメディア講義室
総合研究2号館のアクセス
発表者とタイトル(各40分程度)
・須田 文明(農林水産省 農林水産政策研究所・国際領域上席主任研究員)
「装置と配置:フーコーとドゥルーズ、そしてカロン」
・山本 泰三(四天王寺大学ほか・非常勤講師)
「経済学の行為遂行性という問い:M. カロンを中心に」
・北川 亘太(関西大学・助教)
「行為遂行性の事例:理論、テクスト、配置の相互関係」
・全体討議 30分程度
※事前登録は必要ありません。無料のイベントとなっています。
※経営管理の学生はポイント制の対象となります。
主催: 京都大学デザイン学大学院連携プログラム
担当者:山内 裕(経営管理大学院・准教授)
問合わせ先:yamauchi[at]gsm.kyoto-u.ac.jp(山内)
([at]を@マークに変えてください)
報告:
遂⾏性(パフォーマティヴィティ)について、幅広く議論した。Callonらの著作を翻訳し解説している3名の講師に様々な側⾯から話題提供していただいた。
まず須⽥先⽣に、遂⾏性概念の中核をなす「配置 (agencements)」の概念を、フーコーの「装置 (dispositif)」との違いを際⽴たせながら解説していただいた。もともと装置概念は異種混淆的な要素が同⼀の運動の中で捉えられるため、構造、制度、場などの概念に依拠する必要がないという利点があったが、⼀⽅で⼈々をコントロールし⽅向付けるということを機能としており、⼈と⾮-⼈を対照的に扱うことが難しい。特に、ドゥルーズが主体化、⾔明⾏為、諸⼒の線が配置の変化によって絡み合うという意味で、装置ではなく配置概念を採⽤し、Callonがこの配置概念(agencement)における⾏為遂⾏性(agency)の強調を重視して採⽤した。Deviceやアッセンブラージュのような訳語は、このような概念の差異をわかりにくくしてしまう。その他、アクターネットワークにおけるthe socialの位置について、事前には共通世界は存在せず、遂⾏的にあらわれる暫定的な結果であるということも議論された。遂⾏性やアクターネットワークに対する批判も交えて、わかりやすく議論していただいた。
⼭本先⽣に、ご⾃⾝が須⽥先⽣と翻訳された『経済学の⾏為遂⾏性』を中⼼に、Callonらの議論する経済の遂⾏性について解説いただいた。まず経済学が⼀つの科学の名のもとに主体としての経済学者が客体としての経済を観察し記述するという枠組みの問題点を指摘し、遂⾏性概念の経緯をAustinの⾔語⾏為論、Butlerのジェンダー研究、科学技術社会論における介⼊概念などを辿りながら解説していただいた。
最後に北川先⽣には、ある企業での事例研究における研究者と研究対象者の間の遂⾏性について、発表いただいた。例えば、対話概念をサービス・ドミナント・ロジックから取り出し、研究者が参加する形でクライアントの商品開発のコンサルテーションを「対話」として概念化し、この概念化の結果としての組織の変容を記述するという、研究と現場が⼊り組んだ遂⾏性を議論した。
社会をデザインしていこうとするデザイン学においては遂⾏性は避けることのできないキーワードであるが、今回は理論的背景、具体的な経済学の遂⾏性概念、そして事例研究という幅広い視点で議論することができ、理解を深めるいい機会となった。