実施報告(PDF)
1. 概要
昨年に続き、4回目となるデザインスクールin沖縄を開催した。本スクールの対象は主に1年次の履修者であり、ファシリテーションの習得を一つの目的とし、合同でワークショップを行うことで、新しい問題の発見と解決策を見いだす機会としている。
第1回のテーマは「観光」、「おもてなし」、第2回のテーマは「健康」、「雇用」と若干抽象的な側面もあったが、第3回のテーマは沖縄市の「こどもの国の活性化」「図書館と商店街の連携を通した活性化」で、具体的なテーマとして沖縄市の抱える実問題に挑戦した。第4回は、今日もなお続く沖縄の深刻な米軍基地問題を題材とし、移設後の「普天間飛行場の跡地利用」について、沖縄の新たな発展につなげるためのアイデアを検討した。
昨年同様、参加者がワークショップにおいてより効果的なファシリテーションを実践できるよう、事前にファシリテーション講習を実施した。また、学習効果を高めることを狙い、スクール終了後に参加者自身による振り返りを行った。
2. スケジュール
事前に京都にて半日のファシリテーション講習を実施し、ファシリテーションの基礎を習得した。沖縄での合同ワークショップは例年11月の三連休を利用して実施しているが、今年は連休がなかったため、京都大学、琉球大学の双方の授業に影響のないよう、京都からの移動は金曜日の夜に行い、ワークショップは土日の2日間で実施し、最終発表会を月曜日の夜に行った。主なスケジュールは次のとおりである。
2016年11月18日(金)~11月22日(火)
11月5日(土)午後 | ファシリテーション講習(十河、中川、平本) (於 京都大学デザインイノベーション拠点) |
11月18日(金) | 夕方、京都から関西空港へ移動し、空路で沖縄へ (機内にてオリエンテーション資料配布) 那覇空港21:55到着、那覇市内宿泊 |
11月19日(土) 11月20日(日) |
京都大学-琉球大学合同デザインスクール(於 琉球大学) |
11月21日(月) | 日中、ベンチャー企業等2箇所訪問 夜、合同デザインスクール発表会(於 琉球大学) ワークショップの振り返り(十河)(於 宿泊先ホテル) |
11月22日(火) | フィールドワーク(那覇市周辺) 夕方 那覇空港から伊丹空港へ。帰京 |
3. プログラム
3.1.ファシリテーション講習(京大のみ) 13:30~17:40(於 京都大学デザインイノベーション拠点)
合同デザインスクールの2週間前に、デザインプロセスとデザイン手法、ファシリテーション、インタビュー、フィールドワークについて基礎的な講習を実施した。昨年の本スクールのほか、国内外で実施しているさまざまな活動における履修者のフィールドワークの様子を見ると、基礎的なスキルが不足していることがうかがえたため、今回の講習ではフィールドワークについての講習をさらに追加した。また、特に第1回の本スクールの参加者は現在のようなファシリテーション講習を受講していないため、今回のスクールに参加しない履修者にも告知し、4名が加わった。講習には計14名が参加した。
(1)講義「デザインとは」(十河)
問題発見と問題解決のための基本的なデザインプロセス(発散・収束)、ブレインストーミング、強制発想、親和図法などの基本的なデザイン手法について講義と演習を行った。
(2)講義「ファシリテーションとは」(中川)
ファシリテータの心構え、および、傾聴、質問の仕方などファシリテーションの基礎的な手法やツールについて講義を行った。
(3)フィールドワークについて(平本)
フィールドワークの概要、フィールドワークでの観察や記録の仕方などについて講義を行った。
(4)講義「インタビューについて」(中川)
半構造化インタビューの概要と手順、質問の仕方など、インタビューの基礎について講義を行った。
(5)テーマの説明(十河)
今回の合同デザインスクールのテーマ(後述)について簡単な説明を行い、当日の自チームのワークショップのプログラムをデザインすることを、当日までの課題とした。
(6)沖縄の基地の背景の学習(講習終了後、任意参加)
沖縄の米軍基地の背景を事前知識として学ぶことを目的として、番組を鑑賞した(希望者のみ参加)。第二次世界大戦の終盤に米軍が沖縄に基地を建設した当時の様子や、沖縄の日本への返還に至るまでの歴史を映像で学んだ。
3.2.京大-琉大合同デザインスクール11月19日(土)~20日(日)、21日(月)夜(於 琉球大学地域創生総合研究棟1階)
沖縄県や宜野湾市では、普天間基地の返還後の跡地利用について計画・討論が行われている。さまざまな調査を経て中間とりまとめを終えており、現在は具体的な利用計画の策定が進められている段階である。本スクールでは、今日もなお続く沖縄の深刻な基地問題を題材とし、宜野湾市を中心とする現地の状況を理解した上で、改めて学生の視点から普天間飛行場の跡地をどのような目的でどう利活用したらよいかをデザインした。参加者は5~6名で1チームとなり、計6チームに分かれてグループワークを行った。デザイン学履修者はファシリテータとして各チームの議論をリードした。
発表タイトル:
グループ1:ちゅらむい 海と夕日に映える街、普天間
グループ2:はくぶんベース FUTENMA
グループ3:普天間アグリシティー
グループ4:ギノワンシティプロジェクト2035
グループ5:ちむぐくる×まちつくる
グループ6:新・チャンプルー文化 沖縄起業と文化(カルチャー)が交差する街(優秀賞)
スケジュール
[1日目: 11/19(土)]
9:00-9:30, 受付
9:30-9:40, オープニング・挨拶
9:40-10:20, 基調講演1「普天間飛行場跡地利用について」
塩川浩志氏(宜野湾市政策部まち未来課 係長)
10:20-10:40, 基調講演2「普天間基地跡地のポテンシャルとスケール感」
小野尋子氏(琉球大学工学部環境建設工学科 准教授)
10:40-11:00, 休憩
11:00-12:00, グループワーク1回目
12:00-13:00, 昼食
13:00-18:00, グループワーク、フィールドワーク
[2日目: 11/20(日)]
9:00-18:00, フィールドワーク、グループワーク、プレゼン準備
18:00-19:00, 懇談会
[3日目: 11/21(月)]
15:30-18:30, 発表準備最終調整
18:30-20:00, 発表会(司会:當銘大樹(株)がちゆん 取締役/琉球大学法文学部)
20:00-20:20, 講評
小野尋子氏(琉球大学工学部環境建設工学科 准教授)
呉屋勝広氏(ねたてのまちベースミーティング 会長)
20:20-20:30, 表彰式、クロージング
山田孝治氏(現地実行委員長/琉球大学工学部環境建設工学科教授)
3.3. ベンチャー企業訪問
合同スクールの最終発表会が行われる3日目の夜までの時間を利用して、沖縄を拠点として活動するベンチャー企業等を訪問し、第一線で活躍する経営者と議論を行った。
(1)アクシオヘリックス株式会社(那覇市西2-16-3 屋島組本社ビル2階 http://www.axiohelix.com/)
アクシオヘリックスは、沖縄を主な拠点とし、海外にも事業展開しているITベンチャーである。創業者のシバスンタラン・スハルナン社長から、創業にまつわる話や、スーダンのドクターカーのプロジェクトについての話を伺った。後者のプロジェクトは、ODAによって提供されたドクターカーに搭載された医療機器のメンテナンスを、スーダンで新たに設立した会社で行っている。最近では国の補助金に頼る、リスクの低い仕事が多くなっていたため、ベンチャースピリットを大切にすべく、昨年頃から方針転換し、国内外で新しい事業を立ち上げているという。
(2)STARTUP CAFE KOZA(沖縄市中央1-7-8内 http://startup-cafe.okinawa/startupcafe-koza/)
スタートアップカフェコザは、起業創業を志す人をワンストップで支援する拠点として開設された。代表の中村まこと氏から、開設の目的や役割等を伺い、併設のコザショアスタジオや沖縄ミライファクトリーを見学した。ここでは会社員、学生、主婦などがだれでも無料でコンシェルジュに相談でき、起業などについてアドバイスや専門家の紹介を受けられる。また、併設されたコザショアスタジオ、沖縄ミライファクトリーを利用してプログラミング学習によるスキルアップや、3Dプリンタなどを使った先端のものづくりができる。近隣の若手革細工職人が3Dプリンタを使って新しい商品開発を進めているといった事例があるという。
4.参加者
【京都大学】
<履修者> 11名(内9名ファシリテーション講習参加者)
<教職員> 6名
【琉球大学】
<学生> 20名
大学院理工学研究科情報工学専攻 3名(M1)
工学部情報工学科 12名(B4×2名、B3×2名、B2×2名、B1×6名)
琉球大学法文学部総合社会システム学科3名(B4×1名、B3×1名、B1×1名)
沖縄国際大学地域行政学科1名(B4)
沖縄国際大学 総合文化学部 社会文化学科1名(B3)
<教員他> 5名
教員3名、技術職員2名
【その他】
社会人協力者4 名(教員1名、企業1名、公益法人1名、行政1名)
5.参加者の所感
実施報告p6~(PDF)
6.リンク
琉球大学のページ
琉球大学-京都大学合同デザインスクール2016ウェブページ