〜デザインプロベナンスデータ体験の創出と展開に向けて〜
日時:2017年3月14日(火)15:00~18:00
場所:京都大学 百周年時計台記念館 ホールI(2階)
下記地図3番。正門入って正面の建物
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/access/campus/yoshida/map6r_y/
概要:
本シンポジウムでは、タイムスタンプや文章での言及といった時間情報を有する大量のテキストデータとのインタラクションを通して、出来事や概念の変遷、来歴、経緯や由来といったものを読み取るということをテーマとします。
対象とするのは、一人の人間が全体を読んで理解するということを想定していないような、時には長い時間をかけて蓄積、収集されたテキストデータです。このようなテキストデータに対して情報技術による表現とインタラクティビティを介した体験を提供し、部分的な発見や理解から触発、創造性を促し、テキストデータに内在する意味の価値と意義を明らかにすることを目指します。
招待講演者から、市史などの歴史情報や作業履歴、コミュニケーション履歴といったテキストデータを対象として、アーカイブと可視化、速読と構造抽出、知識創出の支援を行うアプローチをご紹介頂いた上で、都市や社会制度、大規模システムといった人工物の、デザインプロベナンスとしての体験の創出と展開に向けた議論を行います。
申込:
参加ご希望の方は、中小路までご連絡ください。
nakakoji@design.kyoto-u.ac.jp([at]を@に変えてください)
プログラム:
15:00-15:05 イントロダクション
15:05-16:20 Part 1
「開発ログデータマイニングとソフトウェア開発の可視化」
大平 雅雄(和歌山大学)
ソフトウェア開発の過程で利用される様々な開発支援ツールは大量の開発ログを出力する。開発ログは本来、開発者や管理者の作業を支援するためのものだが、データマイニングすることにより開発者間のインタラクションやソフトウェア構築過程を可視化しソフトウェア開発全体を俯瞰するためにも利用できる。本発表では、開発ログの可視化例をいくつか紹介し、開発ログデータの可能性について議論する。
「合併自治体史のアーカイブと地域の理解」
川嶋 稔夫(はこだて未来大学)
函館市は、昭和時代から平成にかけて7町村が編入合併して現在に至っている。昨年これらの各自治体史のテキスト化が完了し『函館市史デジタル版』として公開されている。地域的に隣接する複数の自治体史データの可能性について議論する。
「ネットワークとメッシュワーク:多数の現象を扱うための記述モデル」
北 雄介(京都大学)
桓武天皇の平安京建設から現代の我々の生活行為に至る、都市におけるさまざまな歴史的現象を関連づけて説明することを試みている。今回は、そのための二つの記述モデルについて、現象の具体事例を交えながら発表する。
16:20-16:30 休憩
16:30-17:45 Part 2
「歴史テキストの可視化と時間」
赤石 美奈(法政大学)
膨大な史料を読み解くには、長大な時間が必要とされる。また、デジタル化された史料データに対しても、単純な統計的手法のみでは解析できず、データに対する多様な視点に基づく解釈が求められる。そこで、連続する時間に多角的に裂け目を入れることで現れてくる様々なパターンを視覚化し、新たな知見や様々な解釈を創発する試みについて紹介する。
「デジタルメディアによる読むという体験の拡張」
小林 潤平(大日本印刷株式会社)
文章を読むときの視知覚メカニズムにもとづき、スムーズな目の動きをうながす表示方式を研究している。より多くのテキストがより早く読める、デジタルならではの日本語リーダーとその効果について紹介する。
「デザインプロベナンスの構想と展望」
中小路 久美代(京都大学)
今、眼前にある人工物を構成する各要素の背景や来歴、由来を、デザインが成長する過程で生成され蓄積される、タイムスタンプ付きのデータ空間とのインタラクションから読み取っていくことを、「デザインプロベナンス」として捉えたいと考えている。
17:45-18:00 クロージング
オーガナイザ:中小路 久美代(京都大学 デザイン学ユニット)
共催:
京都大学デザイン学大学院連携プログラム
JST CREST「データ粒子化による高速高精度な次世代マイニング技術の創出」プロジェクト「ユーザーの主体的理解醸成のためのデータ表現とインタラクティビティのデザイン」グループ
問い合わせ先:
nakakoji[at]design.kyoto-u.ac.jp([at]を@に変えてください)(中小路)
報告:
2017年1月16-17日の二日間、「研究業績の展示と歴史と文脈のデザイン実習」を実施した。本実習は、2016後期FBL/PBL「構成と分解によるアーティファクトの探求と展示」と連携する形で、東北大学電気通信研究所(以下、通研)との協力のもと、研究活動の価値と意義、通研本館1階にある展示空間、および訪れる大学生や研究者という関わりを考えることを目的としたものである。通研に収蔵されている、実物やレプリカ、資料、論文集、写真、さらには数十年前に作成された展示解説文等を資料対象とした。実習は、これらの研究成果に関わる数々のアーティファクトを資料対象として、観察・記録・表現・伝達のプロセスを進め、研究業績の展示と歴史と文脈について構成・展開するAKIRAワークショップ(AKIRA: Achievements/Archive of Knowledge Information/Interaction/Intelligence of Research Activities)として実施した。
実習に参加した学生は、デザイン学本科生2名、当該FBL/PBL履修生1名、東北大学電気通信研究所の大学院生2名である。教員として、デザイン学ユニットの教員3名と通研の教授2名が関わった。また、当該FBL/PBLにご協力いただいているはこだて未来大学の教授1名にも参加頂いた。
1日目は、通研本館1階にある展示空間を訪問し、面白いと思ったこと、興味を持ったこと、疑問に思ったこととして、各自が30個を文として書き出すことを目指した。次に、通研の担当教授による展示室の説明を受け、自分が書き出した興味や疑問に、応えたり問いかけるような情報を、それぞれ短い文章として書き出した。これらを集めて、PersEl(Perspective Elements)と呼ぶ、QA関係や呼応関係に相当するような対応するPersElセットを作り出した。
2日目には、構築したPersElセットから、各自が興味を持つものをいくつか取り出し、それぞれについて、さらに調査をしたり、写真を撮影するなどしてPersElの一つ一つを育てていくこととした。最後に、各自が選んだフォーム(形式)としてそれらを表現し、展示空間についての資料のプロトタイプとして作り出した。
本実習終了後、作り出したPersElをさらに深化させ展示室資料としての情報デザインを行うことを目的として、本実習のフォローアップとなる、AKIRAシンセシスワークショップを3月30日に実施した。AKIRAシンセシスワークショップにおいては、「通研の系譜」「通研の展示」「通研の研究」という三つをテーマとした展示資料を作り出した。
講演プログラム