講師:松井 剛 教授(一橋大学大学院 商学研究科)
人々が日々行っている消費、あるいは日常の買い物は、個人的な問題であるかのように思えるかもしれない。だが、それは同時に集合的な現象でもある。本研究は、消費における集合的な意味の秩序がいかに生まれ、普及していくかを、社会的な諸制度の働きに注目しながら解き明かす。
本講演では、午前は、この研究で使用され、またデザイン学にとっても重要となっている定性調査方法論について講演し、午後は「ことばとマーケティング」の研究成果について発表する。
日時:2016年6月25日(土)10:30~14:30
場所:京都大学 総合研究2号館 大演習室1
総合研究2号館のアクセス(34番の建物)
主催: 京都大学デザイン学大学院連携プログラム
問合わせ先:suzuki[at]gsm.kyoto-u.ac.jp([at]を@に変えてください)
鈴木 智子(経営管理研究部 附属経営研究センター・特定准教授)
講演報告:
人々が日々行っている消費、あるいは日常の買い物は、個人的な問題であるかのように思えるかもしれない。だが、それは同時に集合的な現象でもある。松井教授は、消費における集合的な意味の秩序がいかに生まれ、普及していくかを、社会的な諸制度の働きに注目しながら解き明かしている。
松井教授のご研究によれば、ことばとマーケティングは相互強化プロセスを通じてリアリティを構築している。ここでいうリアリティとは、われわれ自身の意志から独立して存在する認められる現象のことを指している(Berger and Luckmann 1966)。例えば、流行語を取り上げて考えてみよう。多くの流行語がマーケティングの結果として生まれ、またこうした流行語に乗る形のマーケティングが展開されることは少なくない。すなわち、流行やブームとは、ことばで指し示される消費に関わるモノやコトが自明視される状況の成立といえよう。
このようにわれわれが生きる消費社会では、ことばとマーケティングの相互作用が自明視されるリアリティを構築しているといえる。このことばとマーケティングの相互強化関係は、言語が有する制約性と行為が有する主体性がせめぎ合う相互作用である。このことばとマーケティングの関係は、構造的二重性(Mohr and Duquenne 1997; Sewell 1992)としてとらえることができる。
消費と文化という、デザイン学にとっても重要なテーマを考える上で、貴重なご講演であった。