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Design Visions

地理的表示と農作物マーケティング

講師:木村 純子 教授(法政大学 経営学部 市場経営学科)

2015年6月、日本で「特定農林水産物等の名称の保護に関する法律」、いわゆる「地理的表示法(Geographical Indication Act)」が施行されました。登録申請受付初日の6月1日には夕張メロンや市田柿といった地域産品19品目が申請書を農林水産省に提出しました。13品目の申請内容が公示となり(2015年11月30日現在)、日本で初となる地理的表示産品(以下「GI産品」と記す)が2015年12月22日に誕生する予定です。
本講演では、地理的表示が農作物マーケティングにおいてどのような機能を果たすのかをお話しいただきます。

日時:2016年1月27日(木)13:00~14:30
場所:京都大学 総合研究2号館3階 大演習室1
   総合研究2号館のアクセス(34番の建物)

申込:不要  
   ※経営管理の学生はポイント付与対象

主催: 京都大学デザイン学大学院連携プログラム

企画:山内 裕(経営管理大学院 准教授)

問合わせ先:yamauchi[at]gsm.kyoto-u.ac.jp(山内)
      ([at]を@マークに変えてください)


報告:

報告書(PDF)

参加者:21名(学生17、うちデザイン学3、教員4)



DV_20160127_1s.jpg特定の地域と結びついた商品を保障する地理的表示(geographic indication)について講義していただいた。ヨーロッパでは、古くからワインのAOCやDOCなど地域をブランディングする活動は行われている。そのような地域に根差した商品のブランディングについては、次の二種類が存在する。

・PDO 原産地名称保護
・PGI 地理的表示保護

PDOは、その地域に閉じた商品でなければならない。例えば、その地域の牧草で育て、その地域で搾乳し、その地域で生産したチーズはこれにあたる。一方、PGIはそれらの生産過程のどれかが地域で行われ、その地域とのつながり(link)が保障できればいい。この地域をフランス語ではテロワール、イタリア語ではテリトリオと呼ぶ。ここでは特に後者の地理的表示に注目する。

日本でも、2015年6月より、この地理的表示の法律が整備され、現在10品目が登録されている。日本では2006年から地域団体商標という制度が運用されているが、これまで不十分であったことから、地理的表示の制度が整備された。従来の地域団体商標は、品質の保障が自己責任であること、模倣品の取締りを自分でしなければならないこと、また数が多すぎて(和牛だけで40を越える)互いに競争する結果となることなどが指摘されている。地理的表示は農水省が品質を保障し、模倣品の取締りを行う。

この地理的表示は、単に地域に根差しているだけではなく、歴史があることを示さなければならない。例えば、パルメジャーノ・レッジャーノは、ボッカッチョの『デカメロン』にも登場するということがその証明となる。あるいは、豚肉の脂を加工したラルド・ディ・コロンナータは、大理石の採掘で有名なコロンナータで作られるが、大理石の桶で豚の脂を吸収することや、もともと採石という重労働に携わる人々が豚を好んだことなどが示される。

地域で昔ながらのやり方で製造していることが重視される。昨今のグローバリゼーションによって、このような地域に根差した手作業の商品は駆逐される傾向がある。大量生産品にとっては高品質は品質が一定であることを示すが、これらの商品は牛の乳が季節によって味が違い、当然チーズの味も変化することを前提とし、むしろ品質が変化することが高品質となる。また、経済的原理を重視し、コストとなる不良品を削減するために、脂肪分を減らしたチーズを作ろうとすることに対し、顧客の求めに応じてあえてリスクを取り、脂肪分の高いチーズを生産するなどの努力が重要とされる。地理的表示はこれらの商品を流通させることを支援するという。

日本の地理的表示は始まったばかりである。現在進行形で、研究が求められている領域ということであった。

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