日時:2015年12月14日(月)17:30~(19:00頃から懇話会・有料)
場所:京都大学 デザインイノベーション拠点
KRPのアクセス
講演者:竹川 禎信氏
(パナソニック株式会社 エコソリューションズ社 専務)
人々は常により良い暮らしを目指しています。また、時代、社会的背景により「良い暮らしに求められる」要望も異なり、それぞれの変化に応じた対応が必要となってきます。パナソニックでは創業以来 それぞれの時代に応じた人々の「良い暮らしQoL(Quality of Life)」を目指して取り組んできました。1918年の創業の商品アタッチメントプラグは電気が普及してきて“明かり”だけでなく他の用途にも利用できるようにと開発されました。また高度成長期ではより多くの電気製品を手軽に安全に使えるようにと、注力して参りました。そして、21世紀に入ると、より電気を多く使用するのでなく快適性は落とさずに電気の消費量を低減しようという方向で重点的に取り組んで参りました。
「良い暮らし」といえばその領域は多岐にわたりますが、今回は住宅を中心に商品だけでなく、快適な生活が送れるためのサービス、お客様とメーカーとの新たな接点を広げるビジネスモデルについて紹介、説明致します。
転換期を迎えているエレクトロニクス産業、新たな視点でチャレンジし続けるパナソニック、今回は幹部が自ら事例を交え、生の声で語っていただきます。皆様で「良い暮らしQoL(Quality of Life)」とは何か、それを実現するサービスとは何か、それを如何にビジネスに導いていくか、様々な観点から議論をする中で多くを学び、次世代のビジネスデザインに繋げて行きましょう。
対象:京都大学教員・学生、デザインイノベーションコンソーシアム会員、一部招待者
定員:40名程度
参加費:無料(懇話会 1,000円)
申込: 下記より申込ください。12月7日(月)締切
https://pro.form-mailer.jp/fms/68e367fb87133
主催: 京都大学デザイン学大学院連携プログラム
デザインイノベーションコンソーシアム
問い合わせ:デザインイノベーションコンソーシアム 事務局
京都リサーチパーク(株)山口
info[at]designinnovation.jp([at]を@に変えてください)
075-315-8522
講演概要:
パナソニック株式会社は1918年にアタッチメントプラグという商品からスタートしました。このアタッチメントプラグは当時住宅で電気が「明かり」として使われ始めていた時代に、電気を「明かり」以外の用途に使うために開発された商品でした。
その後、安全にかつ使い易い、いろいろな電気製品や商品・システムを開発し供給して参りました。
現在、パナソニック株式会社エコソリューションズ社では特に住宅用の電気設備、住宅設備の製造・販売をしています。戦後の高度成長期ではより多くの電気製品を使いやすくまた安全に使用できるようにしてきましたが、21世紀に入ると快適性はより進化させながら使用電力量を増やさないように省エネルギー、創エネルギー、蓄エネルギーに重点的に取り組んでいます。また製品供給だけでなくこれらの機器を使うことでさらに新たな生活提案できるようなサービスにも取り組んでいます。これらは、まさに創業者松下幸之助が常に考えていたその時代環境に応じたより「良い暮らし(Quality of Life)」の提供ということだと考えております。
本講演では住宅用の設備から当社が取り組むQoLの実現に向けた取り組みについてサービス、ビジネスモデルの視点をも踏まえ、紹介致します。
講演報告:
冒頭、貫井先生の当該フォーラム、並びに今回のテーマ設定に関する主旨説明の後、竹川専務の講演、更に参加者を交えての活発な討議、意見交換が行われた。(参加者;41名)
◆パナソニックのQoL戦略
パナソニックは、松下幸之助が1918年に創業した会社で、アタッチメントプラグ、つまりあかりのための電気を他の用途に展開するための商品からスタートしました。
そして、その後、様々な変遷を経て2012年にパナソニック、パナソニック電工、三洋電機の3社がひとつとなり、2013年からは次の4つのカンパニーで事業が進められています。
・アプライアンス社(AP社):白物家電やデジタル関係のコンシューマ商品、燃料電池など。
・オートモーティブ&インダストリアルシステムズ社(AIS社):カーナビ、電池、工場用の生産設備など。
・AVCネットワークス社(AVC社):デジタルをベースとしたB to Bビジネスで、飛行機のアミューズメントシステムやプロ用カメラなど。
・エコソリューションズ社(ES社):住宅関係をベースにした設備や照明など。
私が所属しているエコソリューションズ社では、創業時のアタッチメントプラグを継続して製造し、そこから展開された配線器具事業(住宅用のスイッチやコンセント等)を行っています。この事業はアジアを中心に世界でも高いシェアをとっています。間もなく創業100年を迎えますが、創業当時の商品を100年後も作り続けている企業は非常に稀だと思います。
さて、当初は電気が便利だということを訴求しながらスイッチやコンセントを広め、続いてブレーカーや分電盤へと展開し、電気を安心安全なかたちで普及させようとしてきました。そうして発展してきたのが20世紀の松下です。
21世紀になると、発電と蓄電そして機器の連携を行っていこうとする考えが出てきました。これを形にしたのが、パナソニックエコソリューションズのスマートHEMS(ホームエネルギーマネジメントシステム)です。つまりエネルギーをマネジメントすることで環境負荷を低減しつつ、快適な環境を作ろうというものです。
本日のテーマになっているQoLを直訳すると「生活の質」となりますが、ここでは精神面を含めた持続性のある豊かな暮らしを実現して、生きがいや幸福感につなげていこうという意味に捉えています。われわれはQoLを実現するためのものとして、スマートハウスを位置付けています。そのひとつが、エネルギーを賢く使い、かつ快適な暮らしにつなげていく「エネルギーマネジメント」です。そしてもうひとつは、空気環境やあかりなどで快適な空間を作り出していこうとする「快適空間マネジメント」です。ほかにも、家事の軽減のためのサポートサービスやヘルスケア、高齢者サポートといったものも入ってきますが、ここでは「エネルギーマネジメント」と「快適空間マネジメント」についてお話ししたいと思っています。
◆エネルギーマネジメント
20世紀は電気をどんどん使って、使用量に応じて電力会社が電気を供給していく時代でした。この時代に於いては、電力会社は電気をいかにピーク時に耐えられるように発電・送電設備を強化するかということが重要で、ピーク時以外は発電量を調整していました。しかし今後は需要側、つまり電気を使う側も計画的に電気を使うという流れになってきます。したがって電気を使う側でも調整するという「エネルギーマネジメント」が必要になってきます。住宅においてエネルギーマネジメントを考える際、住宅自体の断熱、遮熱、遮光等の性能をあげ、自然の力を活用し快適な環境を作り(パッシブ)、さらに機器の効率的な制御でさらにエネルギーを削減すること(アクティブ)を考えています。このパッシブ的な使い方とアクティブな使い方をうまく連携させて賢くエネルギーを使っていこうというのが、「エネルギーマネジメント」の基本的な考え方です。
電気を賢く使うためには電気の使用量を見て確認するという基本的な考え方があります。当社でもスマートコスモという、電力計測ができる分電盤があります。従来は電気安全のために分電盤があり、漏電や短絡が起こると電気が遮断されるものでしたが、これからはどれだけ電力使っているのかをしっかりとわかるようにしなくてはなりません。どの機器が電気をどれだけ使っているかを確認しながら、エネルギーを賢く使っていこうと考えています。また、家電機器を連携することでさらに賢いエネルギーの使い方ができます。家電機器を繋ぐためにECHONET Lite(システム規格)があり、この規格に対応した機器も増えています。電力量をモニターし、コントロールすることで、ピーク電力を下げることが狙いです。こういった電力量の総合的な広範なデータ、つまりビッグデータの活用も重要となり今後いろいろなサービス等に活用されていくと考えます。
たとえば、夏のピーク電力量を削減する方法として、ピーク時に行われる地域イベントに来ると割引券やインセンティブが提供されるというようなことと連携させるサービスが考えられ、実験的にも行われています。
また、生活で使う電力量を見ることで生活サービスにつなげるためのスマホアプリもリリースし、電気の使いすぎを知らせるメールを送ったり、機器の稼動が完了したことを伝えたり、ある部屋の電気使用が始まったことでお子さんが帰宅したことを連絡したりしています。このようにして住宅内でのエネルギーマネジメントを行うことで電力使用量を下げるだけでなく新たな価値も生み出そうとしてエネルギーマネジメントの普及を狙っています。
次に太陽光発電と蓄電池を導入した住宅でのエネルギーマネジメントについて話します。発電と蓄電をもつことで購入電力量の削減やより電気料金を下げることができます。昼間に発電した電気を蓄電池に貯め夜間に使用することで購入する電力を削減することができます。また、現在 太陽光で発電した電気は高く買い取る契約がある場合には昼間太陽光で発電した電気はできるだけ売るようにし 使用する電力は夜間の安い料金で蓄電すれば経済的に効果がでます。さらに蓄電池に電気を貯めていると災害などでの停電時に電気を使用することができます。震災以降、日本ではCO2の削減がトーンダウンしていますが、いかに太陽光などを使って蓄電池などに蓄え、適切なタイミングで電気を使っていくのかということは環境面からも注視される時代になってきたように思われます。その一つとして、リチウム電池がありますが、価格面の課題が残されています。
今後発電した電気をいかに蓄えて使うかという生活スタイルとともにそれを具現化する安全安心で安価な蓄電システムを提案していかないといけないと考えています。
◆エネルギーマネジメントの事例紹介
パナソニックでは、神奈川県藤沢市の工場跡地にFujisawaサスティナブル・スマートタウンを開発し、2014年に街びらきを行いました。敷地内を戸建住宅、集合住宅、健康・福祉・教育、商業施設、コミュニティセンターなどのエリアに分け、街全体でCO2を削減していくことをコンセプトにしています。そのために再生化エネルギーをたくさん使っていこうということで、戸建住宅は全戸に太陽光発電を採用し、蓄電池も備えています。
更に、街の外側にも太陽光を設置していて共有スペースの電気に使われています。災害時などにはライフラインとして機能し、3日間くらいは自立可能です。電気は地域の方にも供給され、地域にも貢献できるように考えられています。
また、大阪と埼玉にある自社の社宅で現在実証実験をしています。従業員を対象としているのである程度生活パターンの共通点はありますが、各住戸のエネルギー量を計測し、世帯数や年齢によって電気の使用量や時間帯などがどのように異なるかデータを分析しています。エネルギーマネジメントをしていく時に、今日はどのくらい電気を使われるのかというのが、どのくらいの精度で予測できるかというのが実験の目的でもあります。同じ条件において過去の電力をどのくらい使ったかを調べ、今日はどれくらい使うのだろうか、天気の影響とかカレンダー、曜日関係を考慮したうえで予測をしています。予測することによって電力の使用量のアドバイスが可能になり、情報を発信していくことが可能となります。
これらの実験と経験を積み重ねることにより更に進化していくものと考えています。
◆快適空間マネジメント
次は快適な空間マネジメントに関する新しい取り組みを4つご紹介します。
一つ目は照明です。LEDが浸透したことで照明の色は自由に変更できるようになり、生活シーンに合わせた快適なあかりを生むことが可能になりました。たとえばリビングで子供が勉強するにはどんな照明の色がいいのかという観点から、上からのスペースライトと手元のタスクライトを使うことで集中力を高めることができるなど、シーンに応じたあかりの提案をしています。
二つ目は、室内空気を変えることで快適な空間を作るというもので、空気清浄機、換気扇など空調関係のアプライアンスとの連携にも取り組んでいます。これは空気をコントロールして最小エネルギーで健康につなげるというものです。
三つめは、キッチン空間の快適性で、システムキッチンを自分の家にフィットさせるためにはどうしたらいいかという提案をしています。これはweb上で種類や価格、デザインなどを選び、食洗機などオプションや色を選ぶと、どのくらいの価格になるか自動で見積もりが出来るとともに、CG画像で確認することもできます。この提案をもとに工事業者さんにこのまま発注していただけます。
四つ目が、プロイエ(PROIE)事業で、これはかつてあった御用聞きをイメージしたサービスです。暮らしに関するお困りごと、たとえばコンセントを増やしたいと思っても、どの業者さんにどのように頼んでいいか、またそれがどの程度の価格になるのかわからないというような理由で、結局放置したままになってしまうことがあります。
松下電工はもともと電気工事屋店や工務店さんと仕事をしてきたことから、スタートした取り組みで、住まいに関する小さな困りごとの窓口を街に作っていこうというものです。現在は関東エリアのみですが、今後名古屋や関西でも同様のサービスを拡大したいと思っています。
これらの取り組みを総合的に取り入れ、エネルギーマネジメント、快適空間マネージメントを行いながら、QoLを実現するための提案を行っていきたいと考えています。
デザインイノベーションコンソーシアムのページリンクは下記となります。
http://designinnovation.jp/program/design-forum/vol7.html
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