講演者:舘 知宏 助教(東京大学大学院 総合文化研究科)
Tomohiro Tachi (Assistant Professor, Graduate School of Arts and Sciences, University of Tokyo)
折り紙を用いた構造生成研究における世界的第一人者である舘先生にご講演を頂きます。
紙をはじめ様々なマテリアルを〈折る〉ことによって、高い剛性・柔軟性・インタラクティビティを備える、美しい形状がつくり出される様は、圧巻です。
ご講演では、多くのビジュアルな表現をご紹介いただき、実際のモノもいくつか触らせて頂けることと思います。
参加申し込みは不要です。ぜひふるってご参加ください。
Dr. Tomohiro Tachi is a worldwidely known Origami researcher. His talk is going to be given in Japanese but what he would show us during his talk will be mostly visual and tactile, and the content he would share with us goes beyond language. No registration is required. Everybody is welcome.
日時:2015年2月3日(火)13:30~15:00
場所:京都大学 デザインファブリケーション拠点(吉田キャンパス 工学部研究実験棟151室)
デザインファブリケーション拠点のアクセス(No.58の建物)
講演概要:
折紙は、一枚の紙を折って様々な形にするという伝統的な遊びの枠を超え、国際的そして学際的な研究分野として発展している。折紙には、紙を折ると硬くなるという折版構造としての機能、設計図のパターンが自動的に折り上がって立体形状が生まれるという自己折り(Self-Folding)の機能、折り畳み展開し形や体積を変化させられる展開構造物の機能など、多様な機能性がある。
こうした折紙の特殊な機能性をデザインに応用するためには、既存の折紙パターンを応用する単純な発想ではなく、折紙の本質的な幾何学を理解して問題に向う必要がある。このようなデザインプロセスにおいては、様々な与条件の元で、折り畳みや連続変形などの幾何条件を同時に満たすように解く必要があり、計算折紙が重要な役割を担う。
本講演では、折紙の科学、その機能性と応用、そして計算折紙の実例を解説する。一枚の紙を折るだけで任意に与えられた複曲面を近似するOrigamizerシステム、剛体折紙(パネルとヒンジで形作られるメカニズム)の理論で設計した硬さと柔らかさが共存する特殊な展開構造物などをデモを交えて紹介する。
講演者略歴:
2005年東京大学工学部建築学科卒。2010年同大学院工学系研究科建築学専攻博士課程修了。博士(工学)。同年より東京大学大学院総合文化研究科助教、さきがけ研究者。折紙の数理研究、計算に基づく設計手法、コンピュテーショナル・デザインとファブリケーションの研究などを行う。2002年より計算による折紙創作を続けている。Freeform OrigamiやOrigamizerなどの開発したソフトウェアはウェブページにて公開している。
講演報告:
折紙の数理研究およびコンピュテーショナルオリガミと呼ばれるシミュレーションシステムを用いた折紙の原理の解明と構造設計支援のご研究に携わられる舘先生から、折紙の設計と剛体折紙についてご講演頂いた。当日は、デザイン学本科生を中心として、15名ほどの参加者があった。
日本、およびヨーロッパにて古くから探究されてきた「折紙」であるが、昨今、国際的、学際的な研究分野として発展しつつある。折紙を工学的に応用する動きというよりもむしろ、工学の発展に伴い、工学を応用することによって折紙の原理と構成についての理解が進みつつあるとのことであった。
折ることで曲がるが伸び縮みはしないという紙の性質をベースに、折紙の本質的な幾何学的原理を礎として、折ると硬くなるという折版構造としての機能や、折り畳みと展開による形状と体積変化といった展開構造物としての機能についての説明があった。
舘先生がご自身で開発された、折り畳みや連続変形といった操作をインタラクティブにシミュレーションするソフトウェアシステムのデモや、数々の多様な形状の構成と展開のムービーをご紹介いただき、非常にインスパイアリングな講演となった。講演後、舘先生が持参して下さった、実際の折紙の作品や構造物の実物も多数見せて頂き、参加者の多くがご講演終了後も会場に留まり、舘先生を囲みながらディスカッションを行った。
ご紹介頂いた研究テーマは、幾何学、構造物設計、インタラクティビティという3つの要素を、建築学および情報学を背景として展開されているものと見受けられた。デザイン学プログラムにおいて行うべき研究テーマのひとつの例としても、デザイン学本科生にとって非常に有意義な講演となったと考えられる。