日時:2014年12月15日(月) 17:00~18:30
場所:総合研究2号館 3階北東角 大演習室1
総合研究2号館のアクセス(34番の建物)
講演者:神武 直彦 准教授
(慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科)
(宇宙地理空間技術による革新的ソーシャルサービスコンソーシアム(GESTISS) 理事)
担当者:山内 裕(経営管理大学院 講師)
yamauchi[at]gsm.kyoto-u.ac.jp ([at]を@に変えてください)
講演概要:
人工衛星や携帯電話など多様なセンサやソーシャルメディアの普及によって、いつ、どこで、何が起き、どう活動しているのかを迅速に把握、解析できる環境が整いつつあります。このような環境の変化は、従来の限られた種類や量、精度のデータの利活用を前提に展開されてきた様々な社会・公共システムの革新および再構築を行う可能性を持っています。そのようなシステムの実現においては、多様なステイクホルダとの協働によって大きなビジョンを描き、新たな価値を生み出すためのデザインを行うことが重要です。そのためには、木を見て森を見るようなシステム思考と、人間を中心において共感や感性を大切にするデザイン思考のそれぞれの長所を活かした考え方や手法が有用です。本講演では、宇宙システムからコミュニティシステムまで、具体的な取り組み事例を紹介しつつ、システム思考とデザイン思考の融合によるイノベーションについて論じます。
講演者略歴:
慶應義塾大学大学院理工学研究科修了後、宇宙開発事業団入社。H-IIおよびH-IIAロケットの研究開発と打上げに従事。欧州宇宙機関(ESA)研究員を経て、宇宙航空研究開発機構主任開発員。国際宇宙ステーションや人工衛星に搭載するソフトウェアの独立検証・有効性確認に関するアメリカ航空宇宙局(NASA)、ESAとの国際連携に従事。2009年度より慶應義塾大学准教授。Sentinel Asia Projectメンバー、Multi-GNSS Asia 運営委員、IMESコンソーシアム代表幹事、高精度衛星測位サービス利用促進協議会アドバイザ、米国PMI PMP。アジア工科大学大学院客員准教授。博士(政策・メディア)。
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講演報告:
報告書(PDF)
本フォーラムでは慶応大学システムデザイン・マネジメント研究科(以下SDM)准教授の神武先生にご講演頂いた。講演では、先生のバックグラウンドである宇宙開発事業からコミュニティシステムのデザインに至った経緯、SDMでの活動や、システム思考×デザイン思考について、時間の許す限り実例紹介を交えてお話し頂いた。講演は慶応SDMのご紹介から始まったが、SDMは複雑に絡みあった社会課題の解決を目指しており、その点は京都大学デザインスクールの理念と重なっている。講演の題名にもあるように、課題をシステムとして俯瞰的に捉えながらもしっかりと設計(デザイン)のできる人材像としての「木をみて森もみる」という言葉はSDMの特徴を体現しているように感じた。その後、ビジネススクールとデザインスクールの違いを踏まえた上で、両者の強みであるシステム思考とデザイン思考を掛け合わせることで何ができるか、という議論に移っていった。今回は京大デザインスクールでのご講演ということもあり、システムエンジニアリングについてその定義や活動についてご説明頂いた後、SDMで大切にされているV&V、verification(検証)とvalidation(妥当性検証)の考え方についてお話いただいた。次に活動の実例を幾つかご紹介いただいたが、中でも、衛星を用いて津波に関する情報を被災地域の住民の状況に合わせて送信するシステムのプロトタイピングの完成度は高く、私たちがこれからデザインスクールで活動していく上で、大変よい刺激となった。
最後に、人と人がつながるシステムをどのように作るか、またユーザだけではなく、ユーザを取り巻く社会まで考慮して広い視野でデザインするという観点から、コミュニティシステムについてお話をいただいた。SDMが主催している、G空間未来デザイン(地域課題を解決するための地理空間オープンデータを用いたアイデアソン、ハッカソン、マーケソン)やOur futureなど、ユーザを巻き込んだフューチャーセッション・プラットフォームをご紹介いただき、講演のまとめとして、様々な社会問題(特に自然、人工災害、健康)の解決に、システム思考とデザイン思考を掛け合わせていくことの可能性、また、イノベーションの主役は技術ではなく人であり、コミュニティであるという先生の想いをお聞かせ頂いた。先述した通り、慶応SDMは京大デザインスクールの理念と重なる部分もあり、本講演では参考になるお話を多く伺ことができた。