世界遺産となっている文化的景観の実例において、その継承のために行われている地域主体のイニシアティブを育成する活動、多様な産業・生活文化の部門とも連携して創造的に保全を行うために取り組まれている実績について、イタリア・オルチア渓谷、インドネシア・バリ島の経験を学ぶ。ゲスト講演者として、パオラ・ファリーニ教授(ローマ大学)、カトリーニ・クボントブ(インドネシアヘリテージトラスト)を招く。日本語通訳付き。
日時:2014年9月11日(木)13:00~15:00
場所:京都大学 デザインイノベーション拠点(KRP西地区9号館506号室)
KRPのアクセス
講演1:「オルチア渓谷の文化的景観とその継承発展のための地域組織の実績」
Paola Falini(ローマ大学・教授)
講演2:「バリ島の文化的景観と地域主体の生活・文化の発展」
Catrini Kubontubuh(インドネシアヘリテージトラスト)
コメンテーター:宗田 好史(京都府立大学)、小浦 久子(大阪大学)、
植田 暁(景観ネットワーク(札幌))
コーディネーター:神吉 紀世子(京都大学)
対象:制限なし(学外から文化的景観実務担当者が参加されます)
申込:原則必要なし
会場へのアクセスのお問い合わせは culturallandscape2014[at]gmail.com まで
([at]を@に変えてください)
主催:京都大学デザイン学大学院連携プログラム
協力:日本建築学会農村計画委員会農山漁村文化景観小委員会
お問合せ先:神吉 紀世子(京都大学工学研究科建築学専攻)
kanki[at]archi.kyoto-u.ac.jp([at]を@に変えてください)
講演報告:
一般概念としてのcultural landscapeの保全は、目に映る風景の変容抑止を目的化するものではなく、社会の動きと自然環境の応答関係が動的で複層的であることを前提にその関係持続性をめざす結果としての良好な風景を評価する取り組みである。一定の規則による保全指定対象となっているCultural Landscape(文化的景観)においても、地域における文化の展開、地域コミュニティを含む多主体連携による活動が課題となっており、都市・地域計画に閉じず文化に関わる活動や地域社会イニシアティブ研究など広い領域を包含するデザイン活動としての実践が不可欠な取り組みとなっている。多分野横断的に各地保全地域での成果を共有し、実効的な取り組み展開のあり方を議論することは世界的にも行われているが、今回、世界遺産でもあるイタリアのVal d’Orcia(オルチア渓谷)と、インドネシアのBali(バリ島)の功績を学ぶ機会を設けた。当日は、学外からも、学生、研究者、アーティスト、アートディレクター等の外、京都市、宇治市、奈良市等の国内の文化的景観の保全に携わる実務者も来場し、互いに活動の展開にかかる実践的な情報交換がかわされた。
Val d’Orciaは、顕著な歴史的集落・小都市遺構と農業、自然からなる広域の遺産であり、一種のまちづくり会社を設立することで遺産保全のみならず地域振興、人材育成等にとりくみその実務は大きな注目を集めている。この事例で重要な役割をはたす、今回招聘したローマ大学Falini教授とは、昨年度末に本科生含めた準備的訪問団が現地を訪れ日本の事例も踏まえた交流を行っていた。バリ島について先駆的な保全活動の立ち上げなど重要な役割をはたしてきた、今回招聘したCatrini氏には、次年度以降海外インターンシップ科目での協力を約束し準備中である。今後、このテーマについてプロジェクトとしての交流発展はもとより、インターンシップ科目等が国際的実践的な動きと連動するかたちをとる準備としても一定の位置付けを考えている。