日程:2014年3月27日~30日 (現地セミナー 3月29日)
会場:ローマ、サン=キリコ=ドルチャ(トスカーナ州シエナ県)
歴史的都市や集落エリアの価値ある文化的景観の保全継承と当該地域の創造的発展は、不可分で一体的に扱われるべき課題として国内外の各地で多主体の参画する様々な取り組みが行われている。歴史的な地域の保全とは必ずしも旧態の存続のみを意味せず、時代の要請をも反映した重層的な文化の展開の結果表出する統合的現象として認識するものとなっている。従って、この分野は都市・地域計画に閉じずひろく文化に関わる関係者や地域社会の役割にわたる多主体による議論の対象となっている。とりわけ、世界遺産や国選定文化財となっている歴史的都市や文化的景観においては現在進行形の議論である。
この議論に関して国際的な発信を進めていくことを目標としてイタリア・ローマ大学との交流を行いつつあり、準備的調査と議論開始のために、今回京都からイタリアを訪問して行う比較的小規模なセミナー(研究会)を行うこととした。ローマ大学パオラ・ファリーニ教授等の準備をいただき、現地調査ならびに、Palazzo Chigi San Quirico d’Orciaを会場として現地セミナー「I paesaggi culturali come Patrimonio Mondiale: la Val d’Orcia ed I siti Unesco del Giappone. Gestione e problemi emergenti(世界遺産としての文化的景観:日本とオルチア渓谷のユネスコサイト:管理と新たな課題)」を開催し、オルチア渓谷遺産地域から、景観保全の計画を作成したファリーニ教授、自治体組織代表、地域産業従事者、京都からは、先方の依頼もあり「紀伊山地の霊場と参詣道」県登録委員会メンバーであった神吉がパネリストとして参加し、管理に関わる問題の意見交流を行った。
今回の交流には本科生4名のほか、現地の保全・管理に関わる様々な属性の来場者約20名が参加し、景観の価値保全と統合的に取り組まれるべき地域産業の役割についての意見交流を行った。景観保全は、従来建築・都市等の計画学の担当する分野とされてきた傾向があるが、産業等との密接な関係をもつことから多分野統合的デザイン課題として扱うことが求められており、その研究・実践体制を国際的にも育てていくことが必要であり、そうした意見交流の場をこんごの実習・演習等の場として整備していくことをめざしている。