1. 概要
2018年4月6〜8日 @京都大学
2018年5月25〜28日 @香港バプティスト大学
実行委員長:北 雄介(デザイン学リーディング大学院)
実行委員:石田 亨(情報学研究科)、十河 卓司(デザイン学リーディング大学院)
主催:京都大学デザイン学大学院連携プログラム
共通テーマ:”transfer”
2. 目的
・毎年共通の目的
京都大学でのFBL/PBL、サマーデザインスクール、デザインスクールin 沖縄などを経験したL2を中心とした学生が、香港バプティスト大学や国立成功大学の学生と合同でデザインワークショップを行うことによって、修得したデザイン理論やファシリテーションの手法の定着を図る。
英語でのワークショップである点、京都、香港というアジアの異なる環境を考慮した課題を対象とする点、初めて状況を理解する海外でも問題発見、解決を求められる点で難度が格段に高い。博士課程でのフィールドインターンシップなど本格的な武者修行の前段としての位置づけるものである。
・今回特に重点を置いた目的
京都と香港の2 都市を巡るワークショップである。京都の資源を香港の問題解決に応用する”transfer”というテーマを設定し、各ラウンドにおいてそれぞれの都市のリアルなフィールドに身を投じるプログラムを組むことで、両都市の文化の違いを深いレベルで学んでもらう。
ワークショップでは単なるアイディア出しに終わることが多いが、今回は合計6 日間という期間を活用し、香港ラウンドでは社会実装を想定したテストを実施させ、アイディア出しよりも深いレベルでのデザインの理解を促す。
フィールドワークの計画、取り組むテーマの選択や実装テストの計画などの段階を、学生の主体性を重んじて行なわせることで、何をどうデザインするかを自ら決定するメタデザインの能力や、自律的なプロジェクトマネジメント能力を養成する。
3. プログラム
(京都ラウンド前に京都の学生はフィールドワークを計画、香港の学生は香港の社会課題のリストアップと整理)
京都ラウンド
4月6日(金) 夜 歓迎パーティと導入
4月7日(土) グループごとにフィールドワーク、課題と資源の発見、グループ替え、アイディア生成
4月8日(日) プレゼンテーション、香港ラウンドでの実装テストの構想、リフレクション
(両ラウンドの間に各グループはオンラインで香港ラウンドを計画・準備)
香港ラウンド
5月25日(金) 香港着 夜 歓迎パーティと導入
5月26日(土) グループごとに実装テストを実施
5月27日(日) アイディア洗練、最終発表、リフレクション、バンケット
5月28日(月) 帰国
4. 参加者
京都ラウンド | 香港ラウンド | |||
学生 | 教員 | 学生 | 教員 | |
京都大学 | 13 | 3 | 11 | 3 |
香港バプティスト大学 | 15 | 3 | 15 | 7 |
台湾国立成功大学 | 5 | 1 | 12 | 1 |
合計 | 33 | 7 | 38 | 11 |
※京都ラウンドの京大13名の内訳は、本科L3: 3名,本科L2: 6名,予科L2: 4名
5. 当日の様子、所感など
京都ラウンド
フィールドワーク(エコロジーセンター) | グループ替え |
最初に、香港にtransfer しうる京都の資源をなるべく多様に集めることを目的とし、京大の学生が事前に計画した6つのフィールドワークを行なった。寺社、エコロジーセンター、ショッピングセンター、観光地、京大や吉田寮といった多様な訪問先に訪れ、テーマの多様性につながった。
次に、6グループが見つけた京都の資源と、香港の社会課題とを全て一つに集めてカテゴライズした後に、学生自ら取り組むテーマを選ぶことで、グループ替えを行なった。結果的に「教育」「都市デザイン」「環境」「ライフスタイル」「子供のケア」「遺産」というグループに分かれた。学生がうまく自己組織化し、予想よりもスムーズにグループ替えが進んだ。ただし、フィールドワークからの連続性が切れてしまうという側面もあった。
その後、京都から香港へと資源をtransfer するための具体的なアイディアの生成と、そのアイディアをテストするための香港ラウンドの実装テスト計画の立案をさせた。香港の学生の日程の都合上、3 日目14 時に終了する必要があり、全体的に時間不足気味であった。
京都ラウンドでは全グループがほぼ同じペースで進捗するように計画し、各段階では全体オーガナイザ(北)よりスライドを使ったレクチャーを行なうことで、デザインの理論や方法、ツールなどを教示した。
香港ラウンド
実装テスト(大学生のストレス解消) | 最終プレゼンテーション |
大学生のストレス解消のための施設の運営(「ライフスタイル」グループ)、香港の遺産を巡るツアーの実施(「遺産」グループ)、京都と香港の小中学校でのアンケート調査(「教育」グループ)など個性豊かな実装テストが行なわれた。
学生自身がこのプロセスを楽しみ、真剣に考えており、主体性を重んじたワークショップ設計の効果があらわれていた。
その一方で、ほとんど実装テストらしきものができていないグループもあった。学生の自主性に任せたがゆえに、学生のモチベーションやグループオーガナイザーの指導方針などによって差が出た面があった。うまくいったグループでも、事前準備には相応の労力を要している。ただし、うまくいかなかった部分も含めて省察し、学んでもらえたとは感じている。
実装テストの結果を受けたアイディアの洗練においては、全グループを通じてやや上積みが物足りなかった印象。抽象的なアイディア出しと実装との乖離を、ここでも感じさせられた。
最後には教員・学生の全員をバンケットに招待いただくなど、毎年ながらホスト校の香港バプティスト大学の熱心なもてなしよって、終始和やかな雰囲気で進行した。
(参考)web 上での報告
香港バプティスト大学による香港ラウンドの写真集
https://www.comp.hkbu.edu.hk/v1/?page=album&id=541
香港バプティスト大学によるホームページ
https://www.comp.hkbu.edu.hk/designworkshop/index.php
Facebook ページ
https://www.facebook.com/D4SHK/
(文責:北)