【リーディングプロジェクト紹介】 多言語言論ネットワークの可視化による異文化相互理解の支援

[京都大学情報学研究科・知能情報学専攻 黒橋 禎夫教授] http://www.design.kyoto-u.ac.jp/faculty/s-kurohashi.html

今日に至るまで国家・民族間の紛争は絶えることはなく,グローバル化する世界の中でその問題は一層深刻化している.その要因の一つは言語障壁であり,もう一つは複雑な課題において前提や意見の総体を見通すことの難しさである.まず言語障壁について,情報学の進展により大量の対訳テキストに基づく高精度な自動翻訳が可能となりつつある.翻訳ボランティアを募り,対訳テキストを集積し,それによる翻訳サービスを稼働し,さらにその翻訳結果の人手による修正を集積することで徐々に翻訳精度を向上させる.さらに,ウェブ等の大規模なテキスト空間から,複雑な課題に関する多言語の言論を抽出し,自動翻訳を介してその間の依存,因果,対立関係等を検出する.このように,情報学,経営学,心理学の英知を結集することによって自己増殖的翻訳環境および言論ネットワーク可視化環境をデザインし,人々の異文化コミュニケーション能力,さらに,批判的思考力を涵養することにより異文化相互理解の支援を行う.

対訳コーパスを用いることによる高精度な自動翻訳
対訳コーパスを用いることによる高精度な自動翻訳