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04 行為情報のデザイン
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関係者・関係組織
実施者
大島 裕明 (京都大学 情報学研究科)
南 裕樹  (京都大学 情報学研究科)
白石 晃一 (京都大学 情報学研究科,ファブラボ北加賀屋)
水野 大二郎(慶應義塾大学 環境情報学部,京都大学 デザイン学ユニット)
課題内容
ここでは「どうやるか」を表す情報を「行為情報」と呼びます.本テーマでは,行為情報コンテンツのあり方,提示方法,閲覧方法をデザインします.
行為情報とは,たとえば,縄跳びの跳び方,ミシンの使い方,パンケーキの作り方,本棚の作り方のような情報のことであり,端的には「How-to情報」です.辞書的な情報などは「What情報」であるといえます.現在,Webでは非常に多くの「What情報」に加え,「How-to情報」が提供されています.しかし,「What情報」と「How-to情報」では,最適なコンテンツの作り方や提示方法は異なると考えられます.行為情報は,「何かを行うための情報」であるため,その行為を実際に行いながら,そのやり方の情報を取得するのが最も効率的であると思います.しかし,現状では,多くの場合,「行為」と「そのための情報を取得すること」がうまく融合せず,分離してしまっていてます.それらが分離されないデザインが実現される必要があります.
本テーマの活動では,まず,参加者の皆さんに,それぞれ,「どうやるか」を伝えることができる「行為」を考えてもらいます.ゴルフのスイングの仕方でも,包丁の研ぎ方でも,なんでも,得意なものを考えて下さい.それを「行為情報」にすることが課題です.まず考えられるのは,やっている姿を動画で撮影することでしょうか.しかし,それで十分に伝わるでしょうか.「行為情報」はどのように作られるべきなのかを考えてデザインしなくてはなりません.「行為情報」を閲覧する人は,どのような状況で,どのように閲覧するのでしょうか.現在は,何らかの画面で提示されたものを見るだけというのが主流です.しかし,それで良いのでしょうか.「行為情報」がうまく伝わるために,コンテンツがどのように提示され,どのように閲覧されるのかということもデザインしなくてはなりません.伝えたいことがきちんと伝わる,そんな「行為情報」をデザインし,実現して下さい.
教育目標
解となるデザインが局所的最適解に陥らないようにするため,また,そのデザインが局所的最適解ではないことを自信を持って主張するには,広大なデザイン解空間をある程度網羅的に探索したという事実,すなわち,大量のアイデアを考えて検討したという事実が重要になります.そこで,様々な手法を用いてアイデアを創出する方法を学びます. アイデアが創出されたからといって,そのアイデアがどの程度本当に良いものであるかを正しく評価するのは困難です.そのアイデアを基にしたデザインが完成されたときの真の評価に近づけるために,プロトタイピングが必要になります.プロトタイピングにも様々なレベルがありますので,いくつかの手法を学びます. 多くのアイデアの中から最終的に採用されたアイデアは,実現され,完成されなくては,そのデザインを必要としている人のもとには届きません.しかし,実際に実現するためには,高度な知識や技術が必要になります.実施者は,デジタルファブリケーション(3Dプリンタやレーザーカッターを使ったものづくり),フィジカルコンピューティング(小型コンピュータ,各種センサ,モータ,LEDなどを用いたコンピュータと触れられるモノを融合させる工作),プログラミングのプロです.自分たちのアイデアを基にしたデザインを,実施者をこき使って完成させることで,そこにどんな知識や技術が存在するかを知ることができます.
デザイン理論
・デザイン空間の探索・最適化
デザインとは,与えられた制約の下で,広大なデザイン解空間から最適解を発見する最適化問題です.しかし,数理的な最適化問題とは異なる特徴があり,解くことは非常に困難です.まず,デザイン解を網羅的に挙げることがそもそも容易ではありません.そして,あるデザイン解が得られたときに,それを評価するためにはそのデザインが完成されなくては正当に評価できないという問題もあります.様々なデザイン手法は,そのような状況の中でうまく最適解を発見するための工夫であるということを認識してもらいます.
デザイン手法
・アイデア創出手法
ブレインストーミング,ブレインライティング,マトリックス法などを用いて,アイデアを大量に創出する手法を実践してもらい,実際に100個のアイデアを創出してもらいます.

・アイデア深化手法
デザイン思考ワークシートやビジネスモデルキャンバスなどを用いて,アイデアを深化させる手法を実践してもらいます.

・デザイン評価手法
ペーパープロトタイピング,ラピッドプロトタイピング,アクティングアウトなどを用いて,アイデアを視覚化,触れる化し,評価する手法を学びます.

・デジタルファブリケーション
3Dプリンタやレーザーカッターなどデジタル工作機械を用いたものづくりが,デジタルファブリケーションです.自分たちが考えたデザインが,デジタルファブリケーションを用いることで,どのように実現されるのかを知ってもらいます.

・フィジカルコンピューティング
現実世界をコンピュータの世界につなぐのがフィジカルコンピューティングです.センサーを通して現実世界を認識し,アクチュエータを通して現実世界に干渉します.自分たちが考えたデザインが,フィジカルコンピューティングによって,どのように実現されるのかを知ってもらいます.
スケジュール
一日目
午前
  • アイスブレーク
  • 問題説明
  • 自分が伝えられる「行為情報」を考え,各自1つを目標に決定
  • アイデア創出手法を用いて100個のアイデアを創出
午後
  • 引き続き,アイデア創出手法を用いて100個のアイデアを創出
  • 第一次のアイデア選別(20~30個に選別)
  • アイデア深化手法を用いて残ったアイデアを深化
  • 第二次のアイデア選別(10個程度に選別)
  • ペーパープロトタイピングとアクティングアウトを用いてアイデアを評価
  • 第三次のアイデア選別により,実現するアイデアを決定(1個に選別)
  • 決定案をさらに深化させ,細部を決定
ニ日目
吉田キャンパス内デザインファブリケーション拠点で実施する

午前
  • 安全講習
  • デザインを実現させるためのものづくり
  • プログラミングスキル,電子工作スキル,デジタルファブリケーションスキル,一般工作スキルについて,実施者がファシリテータとなるので,実施者を使ってデザインを完成させる
午後
  • 引き続き,デザインを実現させるためのものづくり
  • プレゼンテーションの準備
三日目
午前
  • プレゼンテーション作成
午後
  • プレゼンテーション