2050年の京都をシミュレーションで予測する
関係者・関係組織
実施者
石田 亨 (京都大学 情報学研究科)
守屋 和幸(京都大学 情報学研究科)
服部 宏充(京都大学 情報学研究科)
村上 陽平(京都大学 情報学研究科)
課題内容
「成長の限界」は1972年に「人口増加や環境汚染が続けば成長は限界に達する」と警告した。
その30年後、40年後に再度のシミュレーションが行われ、データは修正されているが、警告の意義は高く評価されている。
「成長の限界」の著者であるマサチューセッツ工科大学のデニス・メドウズ教授は2009年に日本国際賞も受賞している。
さて、「成長の限界」で用いられたシミュレーション技術はシステムダイナミクスと呼ばれるマクロシミュレーションである。
一方、マルチエージェントシミュレーションと呼ばれるミクロシミュレーションが、都市の交通や株の取引などを予測するのに用いられている。
遠い将来を地球規模で予測するマクロシミュレーションと、近い将来を精密に予測するミクロシミュレーションが発達する一方で、本当に知りたい都市や地域の将来を予測するのは簡単ではない。
本テーマでは、2050年の京都をはじめとする地域をマクロとミクロの観点から予測することを試みる。
例えば、少子高齢化が進むと京都はどうなるのか、中国やインドの成長が京都にどう影響するのか、などなど、様々な疑問に答えることを試みる。
その過程から、将来の都市や生活のデザインを考えるバウンダリーコンディションを導く。
※一部英語で実施可能
教育目標
本テーマでは、対象を巨視的な視点からモデル化するシステムダイナミクスと微視的な視点からモデル化するマルチエージェントシミュレーションを利用して、
異なる抽象度で社会を分析し、潜在する課題の発見や、それを解消するための社会のシステムやアーキテクチャのデザインに繋げる方法について学ぶ。
対象とする地域を京都市するか、京都府とするかで課題設定が異なる。京都市であれば、周辺地域との人口動態や観光業、学生人口の推移、伝統産業や地場産業などの関連性が課題となり、
京都府であれば農林水産業、中山間地域の過疎化、南部地域と丹後等の北部地域の差、高齢化問題等が課題に含まれる。
両者とも地域の抱えている問題および統計情報等をどうシミュレーションに組み込むかが課題となる。
デザイン理論
社会シミュレーションの技法(日本評論社、2003)などを参考文献として、社会の構造理解と動態予測のためのシミュレーション理論について学習する。
デザイン手法
抽象度の異なるシミュレーションを用いた理解と予測に基づき、課題の発見と解法となるデザインの検証を実践する。システムダイナミックスのアプリケーションとしては
Vensimを利用する。
スケジュール
一日目
午前
- シミュレーション手法(システムダイナミクス、マルチエージェントシミュレーション)に関する解説。
午後
- 統計資料や参考文献を調査し、社会の現状ならびに将来に渡る諸問題を把握し、取り組むべきデザイン課題を決定する。
ニ日目
午前
- 社会のデザインに関わる要素を明確化し、システムダイナミクス、およびマルチエージェントシミュレーションのためのモデルについて検討する。モデルがもたらす結果について仮説を形成する。
午後
- シミュレーションを実施し、仮説を検証するとともに、得られた結果に対する社会のデザインについて考察する。
三日目