・数式アレルギー、化学反応式に拒絶反応を起こすほどの文系人間を歓迎します。
・三度の飯より数式と化学反応式が好きという理系オタクを歓迎します。
・難しい理論や理屈は大嫌いというデザイナー志願者を歓迎します。
・フロンティア軌道理論・量子化学・理論化学と聞いてたじろぐ人を歓迎します。
氏名 | 所属 | 専門分野 |
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塩瀬隆之 | 京都大学総合博物館 | システム工学 |
本田 隆行 | 科学コミュニケーター | 科学コミュニケーション |
遠山真理 | 総合地球環境学研究所 広報室 | 科学コミュニケーション |
堂野能伸 | 特定非営利活動法人Board Game Japan | 造形作家 |
戸田健太郎 | 京都大学総合博物館 | デジタルアーカイブ |
2017年現在、自然科学系だけでも20人を越えるノーベル賞受賞者を輩出する日本においては、毎年10月第一、二週のノーベルウィークに日本人の受賞者予想が各メディアで報じられる。特に2014年から3年連続での受賞報道に沸き立った各メディアはノーベル賞受賞の祝賀ムードに包まれたが、その内容の多くは「摩擦がないから答えも白紙となるテストを課したことがある」「実は温泉オーナー」といった、研究に無関係の紹介ばかりで肝心の受賞対象となった理論や研究の内容にはほとんど触れられていない。研究者自身の人となりの素晴らしさを共有することも科学コミュニケーションの一部ではあるが、科学コミュニケーションの本来の趣旨としては研究内容そのものへの関心と理解をより深めたい。
科学館や博物館における展示は、科学研究に触れる一つの機会となりえるが、ミュージアムの展示デザインにおいては、目を惹く展示物の存在が大きな役割を担う。しかしノーベル賞を受賞するような基礎理論の多くは、実験機器や関連する機器類が少ないか、あるいは存在しない場合もあり、展示デザインにおいて多くの学芸員や科学コミュニケーターを悩ませている。
そこで本テーマにおいては、基礎理論の中でも難解とされる量子化学、特に日本人として初のノーベル化学賞を受賞した福井謙一先生のフロンティア軌道理論を例としたミュージアム展示のデザインを検討する。模型、イラスト、漫画ほか、あらゆるメディアを駆使した展示手法を検討することにより、「難解と感じるのはなぜか」「分からないけれど魅力を感じるのはどのような場合か」など、展示ノウハウに隠れた一般則を分類整理し、難解な基礎理論に対して、いかに「取り付く島」をデザインするか、その方法論の確立を目指す。
参加者は、【科学コミュニケーション】や【コミュニケーションデザイン】など、最新の理論と方法論の習得を目指す。対象としては、とくに展示表現困難なノーベル賞級の基礎理論を採用し、今後どのような難解な理論や抽象的な概念を前にしても、それが展示空間においてコミュニケーション不全となる問題構造を的確に分析し、実際に表現可能な手法へと分解設計可能な展示手法の基礎を固める。「伝える」と「伝わる」との違いを認識し、テキストのみならず、模型、イラスト、漫画ほかあらゆるメディアを駆使して、自らが求める展示コミュニケーションがデザインできるような基礎的な力の習得が教育目標である。