このテーマで扱う問題は、現実の問題です。あなたのアイデアで楽しい監視社会を作りましょう。
氏名 | 所属 | 専門分野 |
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大島 裕明 | 京都大学情報学研究科社会情報学専攻 | 情報検索 |
白石 晃一 | 京都大学デザイン学ユニット | 現代美術 |
平塚 晃美 | 京都大学デザイン学ユニット | 機械設計・工作 |
“Big Brother is watching you”
あらゆる行動は監視され、真の自由など幻に過ぎません。逆に、監視されているからこそ、現在の社会が安定しているというのが事実であるといえます。
ビッグデータとは我々を監視した結果のデータです。いつどこに移動したか、どこで何を見ているか、誰とどんな会話をしているか、ありとあらゆる行動が記録されています。IoTとはあらゆるものが我々を監視する技術です。身につけているモノ、周りにあるモノ、自動車、自転車、自宅、ありとあらゆるモノがあなたの行動を記録しています。きっと、人工知能はより賢く監視を実現することでしょう。過去の行動パターンから、次にあなたが何をするかなんてお見通しです。
そんな社会はいやですか?逃げ出しましょうか?いえ、そんなことはできませんよ。本テーマでは、そんな監視社会を「楽しい」ものにすることを考えたいと思います。
多くのBig Brother(注:意味は調べてみてください)たちが跋扈する世界で、多重に監視された社会を単に「ディストピア」とみなすのではなく、どうすれば「ユートピア」にできるのか考えましょう。
本テーマでは、創出したアイデアを可能な限り「形にする」ことに取り組んでいただきます。アイデアは形にしなくては正しい評価が難しいものです。実施者は様々な情報技術、たとえば、プログラミング、フィジカルコンピューティング(小型コンピュータ、各種センサ、モータなどを用いたコンピュータと触れられるモノを融合させる工作・IoT)、デジタルファブリケーション(3Dプリンタやレーザーカッターを使ったものづくり)などの専門知識と技術を持っています。それをうまく利用して、アイデアを実現することを目指しましょう。
解となるデザインが局所的最適解に陥らず、また、そのデザインが局所的最適解ではないことを自信を持って主張するには、広大なデザイン解空間をある程度網羅的に探索したという事実、すなわち、大量のアイデアを考えて検討したという事実が重要になります。
そこで、まず、様々なデザイン手法について紹介します。デザインにおける各フェーズにおいて、それらの中から適切なものを選択し、参加者自らがファシリテーションを行いながら実践することによって、デザイン手法を体験的に学びます。
アイデアが創出されたからといって、そのアイデアがどの程度本当に良いものであるかを正しく評価するのは困難です。そのアイデアを基にして、デザインが実現されたときの真の評価に近づけるためには、プロトタイピングが必要になります。そこで、素早くプロトタイピングを行う手法を学びます。
デザインとは、与えられた制約の下で、広大なデザイン解空間から最適解を発見する最適化問題です。しかし、数理的な最適化問題とは異なる特徴があり、解くことは非常に困難です。まず、デザイン解を網羅的にあげることがそもそも容易ではありません。そして、あるデザイン解が得られたときに、それを評価するためにはそのデザインが完成されなくては正当に評価できないという問題もあります。様々なデザイン手法は、そのような状況の中でうまく最適解を発見するための工夫であるということを認識してもらいます。
【デザイン手法】
ブレインストーミング、ブレインライティング、マトリックス法などを用いて、アイデアを大量に創出する手法を実践してもらいます。
デザイン思考ワークシートやビジネスモデルキャンバスなどを用いて、アイデアを深化させる手法を実践してもらいます。
ペーパープロトタイピング、ラピッドプロトタイピング、アクティングアウトなどを用いて、アイデアを視覚化、触れる化し、評価する手法を学びます。フィジカルコンピューティング、デジタルファブリケーションを利用した、より完成度の高いプロトタイピングを行う手法を体験してもらいます。