ニューヨークに住む友人が、東京に来て「終電」という概念にカルチャーショックを受けたと言っていました。ニューヨークでは地下鉄は24時間営業だからです。地方に行けば自動車での移動となり、ハンドルキーパー役の人が飲まないか、または代行運転を使うのが当たり前になっています。京都市は、とくに学生であれば,自転車で食事に行くということが当たり前ですが、それはその他の地域では見られない文化です。今回のテーマ実施を通じて、そうした日常に潜む文化的な違いについて、みなさんとお話できればなと思っています。
氏名 | 所属 | 専門分野 |
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平岡敏洋 | 京都大学大学院情報学研究科システム科学専攻統合動的システム論分野助教 | 人間機械系 |
大場紀章 | 一般社団法人 ポストオイルストラテジ 研究所 代表 | エネルギー、交通 |
京都は全国的にみても特殊な交通環境にある。都道府県別でみても、一人あたりの自転車保有率は全国1位である一方、自動車保有率はワースト3位である。京都市はさらに特殊で、政令市のなかで自転車の交通分担率が23.4%と高い。
その理由として、公共交通機関が必ずしも発達していない、比較的平坦なエリアである、等の原因が考えられる。一方で、自転車の台数は増え続けており、自転車に絡む事故の割合は全国的に高く、しかも増加傾向にある。
こうした特殊な交通事情のため、京都市の都市構造は、徒歩や自転車圏内で生活が完結するようなエコシステムが形成されており、これはいわば日常的に長距離移動をしない「京都自転車文化圏」とも呼べる状態である。このことは、狭いコミュニティの中で閉じた文化圏を形成することに一役買っている一方、郊外や他府県との人の出入りを妨げているともいえよう。
そこで、本テーマでは、あえて普通の意味での自転車を禁止した世界を想定することで、その場合どのような交通手段が望ましいかということを考えてもらうことを通じて、生活における「移動」のもつ文化的意味合いについて再考を促しつつ、新しい交通手段の検討や、都市計画やインフラ側の見直しによって、京都市が抱える交通問題解決の糸口について新しいアイディアを提案してもらうことを狙いとする。
自転車の代替手段を考えることを通じて、「交通網」という巨大なエコシステムの設計について考察し、新しい時代にあった都市計画の考え方について学んでもらう。また、「自転車」という乗り物の制約を想定することで、普段明示的に考えていない「移動」の価値を再認識し、街や文化にとっての交通手段が持つ意味合いについて学んでもらう。
不便の効用を活かすというデザイン指針や人を間接的に誘う仕掛けに関して、実施者(平岡)がレクチャーする。また、社会的背景や技術トレンドに関して、実施者(大場)がレクチャーする。
【デザイン手法】アイディエーションは、ブレインストーミングの4原則を導入した発散的思考と、グループ間でのバトルを導入した収束的思考の二つの側面から構成する。