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12 体験の記憶をつくる:博物館をフィールドにして
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体験のすべてをデジタルに記録して、記憶をつくることができるのか。その可能性と活用法を、実習を通して考えてみよう。

実施者
氏名 所属 専門分野
楠見 孝 京都大学大学院教育学研究科 認知心理学
中村裕一 京都大学学術情報メディアセンター 情報メディア工学、 画像・映像処理
近藤一晃 京都大学学術情報メディアセンター 情報メディア工学、 画像・映像処理
塩瀬隆之 京都大学総合博物館 システム工学、インクルーシブデザイン、 技術戦略
渡辺靖彦 龍谷大学理工学部 自然言語処理、言語情報と画像情報の統合処理
課題内容

本ワークショップでは、記憶に関わる問題として、博物館で、たくさんのものを見て、写真を撮ったことによって、あとで思い出せなくなってしまう現象(写真撮影減損効果)や、初めて見たのに前に見たことがあるような気がする現象(デジャビュ)などを取り上げる。そして、これらの問題を解決するために、認知心理学の理論や実験と、身につけて体験を記録するための小型カメラや状況を記録するための外部カメラ、それを解析して整理する機器の利用を通して考える。そして、フィールドワークとして、博物館における行動を種々の方法で記録し、そこで得た網羅的な記録データをどのように取捨選択すれば体験を適切に表現できるかを考察し、体験の記憶を整理する方法やそのための機器をデザインすることを目的とする。
 最初に、記憶の認知心理学の理論と実験方法などについての理解を深める。次に、情報メディア分野で用いられているカメラ、センサーなどの記録機器やその解析装置、博物館における来館者の行動について、体験を通して学習する。
 その後、これらの機器とその解析を支える理論のこれまでの適用例の理解を深め、ブレーンストーミングを通して、実際に自分たちでこれらの機器を活用するコンセプトを作成する。専門家のフィードバックを得ながら活用法のコンセプトに基づいた「記憶をつくる」機器のプロトタイプを紙上でデザインする。最終的には、ペーパープロトタイプとその機器による記憶に関わる問題の解決法を成果物として公表し、実現につなげることを目指す。

教育目標

記憶と博物館にかかわる問題解決において、心理学、情報学、博物館学において、必要な理論と方法を学習する。加えて、画像・映像としてシーンを記録する方法の多様さ、それぞれの方法によって伝わる情報が大きく変わることなどを撮影や映像構成の理論として学んだ後,実験的に体感する.また、わかりやすく誰でも使いやすい記録機器をデザインするときの視点や手法についての理解を深める。
 さらに、ペーパープロトタイプが、精度と使いやすさのバランスを考慮しているか、実際に利用に耐えられるのか、またその解析方法や活用方法などに関する評価の観点を学習することで新たな問題発見や提案を行う力を身につける。

デザイン理論・手法
【デザイン理論】
  • インタフェースデザイン(基礎事項について講義を行った後、一般ユーザが使いやすい記録機器、記録整理機器をどのように設計するかをプロトタイプをもとに考える)
  • 参加型デザイン(基礎事項について講義を行った後、小型カメラを付けて博物館見学することによって、記憶をめぐる問題点を明確化させ、プロトタイプ検討段階ではその機器が問題を正しく解決しているか評価する。)
【デザイン手法】
  • ブレーンストーミング・発想法(講義と実習を行った後に、体験の記憶を整理ための機器や活用法について、自由にアイディアを出し、アイディアを整理、結合して、プロトタイプと活用法に結びつける)
  • デザイン評価(ペーパープロトタイプ作成後、そのデザインの評価をおこなうために、複数の評価基準と評価方法を考え、評価を実施し、問題点を検討する)
スケジュール
1日目
午前
  • アイスブレーキング・自己紹介
  • 目標の明確化:記憶支援の目的や必要性
  • 記憶に関する認知心理学、とくに、エピソード記憶、自伝的記憶、記憶 補助、なつかしさ、デジャビュなどの理論と、写真撮影減損効果、デジャビュ現象などの問題の提示、実験法、評価法の紹介
午後①:昼食~コーヒーブレイク
  • 学術情報メディアセンター中村裕一研究室で記憶に関わる機器の操作実習
午後②:コーヒーブレイク~夕方
  • 中村研究室で機器の背景にある理論や応用、インタフェースデザインに関するショートレクチャー
2日目
午前
  • 京都大学総合博物館において、博物館の来館者行動に関するショートレクチャーと博物館内の実地調査
  • ブレーンストーミングを行い、アイディアの具体化
午後①:昼食~コーヒーブレイク
  • 機器のプロトタイプの紙上での作成
  • 専門家によるアドバイス
午後②:コーヒーブレイク~夕方
  • 機器の最終プロトタイプと活用のスクリプトの作成
最終日
午前
  • プレゼンテーション準備(KRP)
午後
  • プレゼンテーション(KRP)