体験のすべてをデジタルに記録して、記憶をつくることができるのか。その可能性と活用法を、実習を通して考えてみよう。
氏名 | 所属 | 専門分野 |
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楠見 孝 | 京都大学大学院教育学研究科 | 認知心理学 |
中村裕一 | 京都大学学術情報メディアセンター | 情報メディア工学、 画像・映像処理 |
近藤一晃 | 京都大学学術情報メディアセンター | 情報メディア工学、 画像・映像処理 |
塩瀬隆之 | 京都大学総合博物館 | システム工学、インクルーシブデザイン、 技術戦略 |
渡辺靖彦 | 龍谷大学理工学部 | 自然言語処理、言語情報と画像情報の統合処理 |
本ワークショップでは、記憶に関わる問題として、博物館で、たくさんのものを見て、写真を撮ったことによって、あとで思い出せなくなってしまう現象(写真撮影減損効果)や、初めて見たのに前に見たことがあるような気がする現象(デジャビュ)などを取り上げる。そして、これらの問題を解決するために、認知心理学の理論や実験と、身につけて体験を記録するための小型カメラや状況を記録するための外部カメラ、それを解析して整理する機器の利用を通して考える。そして、フィールドワークとして、博物館における行動を種々の方法で記録し、そこで得た網羅的な記録データをどのように取捨選択すれば体験を適切に表現できるかを考察し、体験の記憶を整理する方法やそのための機器をデザインすることを目的とする。
最初に、記憶の認知心理学の理論と実験方法などについての理解を深める。次に、情報メディア分野で用いられているカメラ、センサーなどの記録機器やその解析装置、博物館における来館者の行動について、体験を通して学習する。
その後、これらの機器とその解析を支える理論のこれまでの適用例の理解を深め、ブレーンストーミングを通して、実際に自分たちでこれらの機器を活用するコンセプトを作成する。専門家のフィードバックを得ながら活用法のコンセプトに基づいた「記憶をつくる」機器のプロトタイプを紙上でデザインする。最終的には、ペーパープロトタイプとその機器による記憶に関わる問題の解決法を成果物として公表し、実現につなげることを目指す。
記憶と博物館にかかわる問題解決において、心理学、情報学、博物館学において、必要な理論と方法を学習する。加えて、画像・映像としてシーンを記録する方法の多様さ、それぞれの方法によって伝わる情報が大きく変わることなどを撮影や映像構成の理論として学んだ後,実験的に体感する.また、わかりやすく誰でも使いやすい記録機器をデザインするときの視点や手法についての理解を深める。
さらに、ペーパープロトタイプが、精度と使いやすさのバランスを考慮しているか、実際に利用に耐えられるのか、またその解析方法や活用方法などに関する評価の観点を学習することで新たな問題発見や提案を行う力を身につける。