ユニバーサルデザイン調査 (prologue)

ユニバーサルデザインという言葉があちこちで聞こえるようになったが、 その実現方法は Ron Mace が当初に提唱した思想からズレているように 思える。

数種類の使用対象者をあらかじめ想定し、その人達が問題無く使えるよ うにチェックしながら設計を進めるというだけで、本当に良いのか。 想定されなかった人を初めから排除しているという意味で universal とは逆方向に進んでいるのではないか。

Universal PlayThing など、「予め使用対象者を決め込む」こと無しに デザインする方法も知られている。これは遊具だからこそ可能なのであ って、工業製品一般には不可能なのだろうか。

当初の思想からズレていない方法を色々調べてみると、一般に「使用者 とのインタラクションから創発する現象」を利用しているようである。 予め定められた使用方法を厳密に遵守させるのではなく、使用者に よって様々なインタラクションを許す。

作り込むことなく、様々なインタラクションを許すには、使用者への 拘束を緩めてやればよい。ただし、緩ければ緩いほど良いのなら、 棒キレやフロシキが究極のユニバーサルデザインになってしまう。 そうではなく、いい感じの「緩さ」が様々な物事を引き起こすはずだ。 たとえば畳のフチが茶の湯ではホストとゲストの境界とい うアイデアを創発させるように、縁側が家人と他人のコミュニケー ションサイトとなっているように。

このような仮説を検証するために、まず計算機科学の中では 「インタラクションからの創発」が不可欠な分野である人工生命に目をつけ (なにも虫のように蠕く工業製品を作りたいわけではない)、 その研究動向を知るために 会議 に出席し(→蛇足) 、その足でユニバーサルデザインの街 Karlsruhe での現地調査 に向かった。

Last Modified: 2003.10.17
www.smb■sys.i.kyoto-u.ac.jp
Copyright © 2001- Katai Laboratory All rights reserved